「世界最高の職場」は、どう設計されているのか グーグルが定めた「ワーク・ルールズ」とは?

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こうした「人事本」は「ウチの会社って最高だろ!真似できないだろ?」という論調に終始するものだが、著者ラズロ・ボックにコンサルティング会社等での経験もあることから、グーグルのみならず他社の事例などを交えた「未来の働き方」について広く考察するものとなっている。

例えばヘッジファンドのブリッジウォーター・アソシエイツが全会議を記録し全社員に公開しているのをグーグルよりも透明性が高い事例として挙げている。本書は人事関係者にとっては考えさせられる挑発的な内容となっており、働き方の未来を知るための良書である。ちなみに人事に関係しないビジネスパーソンは世の中に存在しないので、誰にとっても本書は良いテキストブックであるとも考えられる。

日本の読者は私も含め「どうせシリコンバレー万歳の特殊論だろう」と斜に構えるかも知れないが、著者は日本の小学校で英語を教えた経験があり、日本人が一流大学に入ってしまえばほとんど勉強せず、日本の大学の成績が採用データに実質的に意味がないと述べたり、「出る杭は打たれる」という言葉も知っている。グーグルが、あるアプローチにおいて日本の工場では常識である「ポカヨケ」を手本にしているとも述べている。

我々、日本の読者にとってもなかなか侮れないのが本書である。もっとも大学生についてであるが、グーグルの分析によれば、「卒業して2~3年を過ぎると学校の成績から仕事の成績は予測できない」そうである。

1998年に二人の野心的な若者によって設立されたグーグルは今では従業員6万人を超える大企業であり、世界で入社が最も困難な会社の一つである。本書ではグーグルの採用について「まずは100万人から300万人の求職者からの応募を受け付ける。(中略)約0.25%しか雇わないということだ」と述べ「ハーバード大学は志願者の6.1%に入学許可を出した(中略)(ハーバードはグーグルの)25倍も簡単なのである」と比較する。

そんな超絶人気企業のグーグルも創業から1, 2年は資金繰りが厳しく、グーグルに転職するほぼ全ての人の入社時の給料が前職より安かったそうである。その頃の初期メンバーには現米国ヤフー!CEOのマリッサ・メイヤー氏などがいた。著者自身がGEからグーグルに移る際に所属部門のCEOから「ラズロ、このグーグルとかいうのは、かわいらしい名前の会社だね、幸運を祈ってるよ(以下略)」と言われた新興企業であった。

「自分より優秀な人だけ採用する」

本書には人事に関して話のネタにもなり、深く思考することもできる内容がいくつも出てくるが、どれも我が国の企業では「わかっちゃいるけど、急には出来ない」話だろう。「自分より優秀な人だけ採用する」や「仕事のアウトプットが良ければどこで何時間働いたかは関係ない」などはその最たるものである。

本書に出てくる「最も優秀な社員1人を何人となら交換してもいいか?」というのは私も好きな問いだ。本書には「一流のエンジニアは平凡なエンジニアの300倍以上の価値がある」と書かれている。私もコンサルティングで企業と接するなかで、博士号レベルの問題を中学2年生30人で解いているような組織構造をよく目の当りにするため、このような思想は我が国の企業の大きなチャレンジだと思料する。

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