「女子アナいじり」?フジ久々の特番は時代錯誤か 4年ぶり「さんまの推しアナGP」で考えた

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さらに退社後もフリーアナウンサーだけでなく、タレント、俳優、ジャーナリストを目指す人がいれば、一般企業に就職する人や起業する人もいます。良い意味で「アナウンサーでいること」を絶対視せず、「長いキャリアの一部分」「自分の武器として生かせるスキルや経験」とみなす人が増えてきました。

局の配慮やサポートで良い関係性に

その観点で見ると、アナウンサー特番は本人たちにとって「インフルエンサーとしての仕事」の1つであり、「キャリア」の1つでもあるのでしょう。アナウンサーはふだん一歩引いて進行役を務める機会が多いだけに、「『個性を発揮できる』『一定の自己主張を許される』という貴重な機会」という感があるのです。

これはアナウンサーたちが以前のような「局や制作サイドからいいように使われている」「無理矢理やらされている」というムードが薄れたということでしょう。もちろん局にとってもアナウンサーは、自ら採用・育成してきた財産であり、出演費の経費削減という意味でも有効活用したい存在。だからこそ、仕事を上から押しつけるのではなく、良い関係性を築こうという姿勢が見られるようになりました。

特にコロナ禍を経て体調への配慮が浸透したほか、キャリアや育児などのサポートも進むなど、業界内では「アナウンサーを取り巻く環境は変わった」と言われています。そんな背景もある中でのアナウンサー特番だからなのか、先日話した30代の中堅アナウンサーは「やりがいがあります」、40代のベテランアナウンサーは「ありがたいこと」と前向きに受け入れていました。

ここまで書いてきたように現在のアナウンサー特番は、本人、局、世間の人々の変化を踏まえると、「時代錯誤なものではない」と言えるのではないでしょうか。アナウンサーたちは誹謗中傷のストレス、失言のリスク、常に見られている不安などを抱えながら日々活動しているだけに、心ない言葉で追い込まないような社会でありたいところです。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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