多くの新規事業の開発が失敗する理由と回避策 「見ざる・聞かざる・言わざる」の問題点とは?
構築フェーズでは、無理なスケジュールの変更を進言しなかったせいでシステム開発が炎上する、パートナーとの契約条件を詰め切っておらず契約が破断になる、合意したはずの要件変更が忘れられリリースの承認が得られない、そういった事象が頻発します。リリース予定が近づき尻に火がついた状態で、担当者にとって最も苦しい状況に陥る可能性のある怖いフェーズです。
残念ながら効率的な解はありません。意思決定の場を設定し、明確に合意する、合意した内容を必ず文章に残しておく、という凡事徹底こそが解決策です。
NRIでは、独自開発した「事業開発ダッシュボード」で過去の検討経緯・決定事項と最新の検討内容を可視化することで、関係者間の認識齟齬を回避しています。事前に検討項目と各検討の留意点を定めて関係者で合意し、可視化用のフォーマットを作成しておくことをおすすめします。
以上、3つの「猿」について問題と回避策を下の図表にまとめています。
問題回避の劇薬:事業共創の仕掛け
さて、ここまで簡潔に問題と回避策を解説してきましたが、最後に飛び道具を1つご紹介します。それは、共同事業やジョイントベンチャー(JV)の設立といった「事業共創」です。目的や役割が明確に規定できれば、コンソーシアムという枠組みでも良いでしょう。
NRIの支援事例でも、他社を巻き込んだおかげで実を結んだケースが多くあります。幅広い視点から事業計画・構想が評価され、企業間の取引なので議論結果が明確になり、「見ざる・聞かざる・言わざる」問題に対処しやすくなります。その効果は、リスク回避の傾向が強い日本企業では想像以上に強力です。
ただし「劇薬」と書いているように大きなリスクもはらんでいます。社員の出向が取りやめになる、出資比率を下げられる、相手の特定部署に話が通っておらず協力を得られない。そのような事態を避けないといけません。
事業全体の必要機能を描き、自社が確保すべきデータやアセット、便益について他社との交渉前に明らかにしておく。そのうえで、足りないリソースを持つ他社と交渉することで、自社の利益を損なわずに協業を進められます。
注意点は、事業計画の見直しタイミングに必ず他社との交渉状況の条件を入れること。そうしないと、計画に合うように無理に交渉を推し進めた結果、不利なパートナーシップを結ぶことになりかねません。
実は、他社も連携したがっているという前向きな情報があります。製造業大手の72.5%の企業が、社会や顧客に価値を提供するにあたり外部連携が重要だと考えていますが、十分にできていると考えるのは全体の10%であり、ほとんどの企業が外部連携を求めています(NRIが2023年度に実施した40社への簡易調査)。
事業開発を考える際に、他社との競争にどう勝つかを考え抜くのは当然ですが、一方で、他社との共創ができないか、柔軟に考えてみることもおすすめします。
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