「無意味な新卒採用」に陥る会社に欠けている視点 なんとなく新卒採用をしていてはいけない

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新卒採用は、莫大な時間とお金と手間がかかります。採用の2年ぐらい前から計画を始め、インターンシップをやって、媒体に告知し、説明会を開き、選考し、内定を出しますが、内定者から辞退されたり、入社しても3年以内に3割が辞めたりします。数年以内に全員が離職することもあるため、時間もお金も手間もすべてが無駄になるかもしれません。

新卒一括採用は、昭和から続く日本独自の仕組みですが、実はこれほど効率の悪いものはないのです。「なんとなくフレッシュな若いやつが欲しいぞ」というフワッとした感覚で新卒採用を始めてしまうのは、非常にリスクが高いのではないでしょうか?

それでも新卒採用をする理由

なぜ、それでも新卒採用をしている企業が多いのでしょうか。さまざまな会社の現場で働く管理職に「なぜ御社は新卒採用をするのですか?」と質問すると、多くの人がこのように答えます。

「人事が楽しいからでしょ?」

そう、新卒採用は楽しいのです。若い人はみんな可愛いです。演技かもしれませんが、みんなキラキラした目でこちらの話を素直に聞いてくれます。内定を出せば(一見)大喜びして感謝の言葉を述べてくれます。優秀な人材を採ろうと思ったら、世界最大級の就職・転職イベント「ボストンキャリアフォーラム」に行かなくてはいけないと言われていますから、わざわざアメリカまで行ったりもします(ただの旅行ではないですよね)。

人事担当者にとって、これほど楽しいことはありません。私も経験者ですから、その気持ちはよくわかります。しかし、新卒はすぐには戦力化しません。育てるにもパワーがかかります。現場の人間にOJT担当をお願いすると、めちゃくちゃ大変なので疲弊してしまうケースが多くあります。

楽しい反面、リスクも高いのが新卒採用です。私はそれも身に染みてわかっていましたから、2つの企業で人事部長をしていたときは「なぜ新卒じゃなきゃいけないんだっけ?」とすごく悩みました。経営者とも何度も話し合い、それでも新卒採用を続けたのは、以下のような理由からでした。

・大量の人材を同時に採れる
・同時に教育できる
・人件費が安い
・コア人材を育成するため

特に重視したのは、コア人材を育てることです。当時、私がいた会社は、成長期から安定成長期の企業ステージに入ろうとしていました。安定期は長続きしないと想定していましたから、10年以内にやってくる変革期に備え、新たなに事業をつくっていく必要がありました。そのため組織を変革し、新たな価値を生み出せる人材を育てていかなくてはいけないと思ったのです。

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