ブラザー工業が「対抗TOB」で狙う三度目の正直 ローランドDGが実施のMBOに「待った」をかける

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ブラザーはTOBの意義について、両社の資産共有によるローランドDGの競争力強化を第一に掲げる。開発にブラザーのインクジェット技術を活用、共同購買を通じた製造コストの削減が期待できるなど、同じ印刷業界だからこそ可能な価値向上施策を実施できるとする。

ブラザーにとっては産業印刷の強化にもつながる。ペーパーレス化が逆風といえるオフィスや家庭用のプリンターとは異なり、新興国で工業製品の消費が増えることなどによる市場の拡大が見込める。ブラザーの事業ポートフォリオ的には、産業印刷領域の拡大は望ましい。

2度拒否されたTOB提案

今回のブラザーによる対抗TOBはローランドDGの同意を得ていない。いわゆる「同意なきTOB」だ。しかしブラザーの佐々木一郎社長は、「両企業にとって、さらにはお互いのお客様にとってもWin-Win-Winの関係を構築できる」との内容でコメントを出した。

実はブラザーはこれまでに2度、ローランドDGにTOB提案を拒否されている。1度目の提案は2023年9月。1株あたり4800円でTOBの提案を行った。2019年の1月頃から、ローランドDGとの親和性について意識し始めたという。同12月からは製品の共同開発を始め、関係を強化していた。

しかしローランドDGは提案に慎重な姿勢を示した。理由に挙げたのが「ディスシナジーの発生懸念」だ。ブラザーとの協議を繰り返すも、やはり懸念が拭えないことを理由に今年2月2日、協議の中止をブラザーに伝達した。

2度目の提案は協議中止から4日後の2月6日。TOB価格を1株あたり4850円に上げると伝えた。だがローランドDGの意思は変わらず、2月9日に再度TOBについての検討中止をブラザーに伝達した。

その日、タイヨウがMBOを前提としたローランドDGへのTOBを2月13日から始めると発表した。ブラザーは1度目の提案を行った昨年9月頃から水面下でMBOの準備が進んでいたことについて知らされていなかった。

ブラザー工業とローランドDGの交渉経緯
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