急速に進化を遂げる中国の金融システム--ハワード・デイビス ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス前学長


現在、中国の金融当局は、金融機関への干渉を弱めることの利点を理解するようになっている。しかし、依然として金融当局は、不動産融資をコントロールするために、資本規制、準備規制、預貸率、最低預金規制、レバレッジ規制などを利用している。

他方、先進国の資本市場では、“マイクロプルーデンシャルな手法”(システミックリスクを高める銀行行動に対する規制)を改良しようとする動きがある。これは今バーゼルで流行となっている用語だ。

私たちは、過剰な信用拡大や資産バブルに対応するには、より弾力的な手段が役に立つことを理解するようになっている。過剰な信用拡張やバブルが起きている状況では、短期金利の操作は効果が薄く、さらに悪い場合は、両刃の剣になるおそれすらある。短期金利の引き上げによって、不動産市場の熱を冷ますことはできるかもしれないが、同時に経済全体を冷やしてしまいかねない。

規制哲学についての考えも世界で収斂しつつある。「市場に抵抗することはできない」というサッチャー元英国首相の有名な言葉は、危機前のアングロサクソン世界の基本的な思想だった。

だが、中国はそれほどイデオロギー的ではない。中国はバブルを鎮静化させるため市場に介入することに躊躇しない。今なお、サッチャー元首相の見解を尊敬しているのは、サラ・ペイリン前アラスカ州知事くらいだ。

09年初めにG7がG20に姿を変えたとき、多くの人々は「これほど多様な国の間で、規制問題に関する合意を形成するのは難しいのではないか」と懸念を示した。しかし、それは杞憂となりつつある。ガイトナー長官などの米国人が「自分たちの言うとおりにやれ」と世界に命令することでもないかぎり、金融規制の将来の役割に関して、適当な合意が得られるだろう。

Howard Davies
1951年英国生まれ。オックスフォード大で歴史学、スタンフォード大で経営学の修士号取得。英中央銀行副総裁を経て、97年に金融サービス機構(FSA)の初代理事長に就任。2003年から10年までロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)学長。

(週刊東洋経済2011年7月16日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
photo:CC BY-SA
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