日本はどうする?欧州が温暖化ガス9割減案を提示 野心的な目標を掲げ、域内産業の移行を支援
実はパリ協定の合意に至る交渉では、削減目標の期間を5年ごとにするか10年ごとか、すなわち次の目標が2035年か、2040年かという議論が長く続き、EUと日本はその中でも10年という目標期間を支持する側であった。そのためEUがこのたび2040年目標を出したことによって、日本も2040年目標でよいのではと主張する一部の省庁幹部がいると聞く。
目標達成が10年後であれば、政権は短期的には責任を問われにくい面もあるからだ。
しかし2035年目標であれ、2040年目標であれ、少なくともIPCCが示す科学的根拠に基づいて提出することが必要だ。すなわち2019年比で2035年に60%削減か、2040年には少なくとも69%以上の目標が必要となる。
ましてや今回、EUが2040年に90%(基準年1990年)という目標を世界に先駆けて提示した今、日本が2040年目標を打ち出すにしても、69%減程度ですますわけにはいかないだろう。
なぜならば、各国の目標が正式にパリ協定での目標として認められるためには、新たに開かれるCOP会合の9カ月から12カ月前に、国連事務局に目標案を提出し、自国の経済力や責任に照らして十分な削減努力をしているという説明をしなければならないからだ。
エネルギーと環境政策の一体的な議論を
その間、世界の研究機関からの評価や他国から陰に陽に寄せられるプレッシャーに耐えうるだけの目標を打ち出す必要がある。
ましてやCOP28では、前出の科学的な進捗評価の結果として、「世界の削減努力は気温上昇を1.5度でとどめるにはまったく足りず、さらなる削減努力が必要」とされた。その指摘をいかに反映してこの目標案にしたかの説明も求められる。
日本では、まもなくエネルギー基本計画の議論が始まる。温室効果ガスの約9割が化石燃料由来である日本としては、エネルギーの選択こそが日本の気候変動対策になる。
日本では主に経済産業省資源エネルギー庁で次期エネルギー基本計画の重要な部分としてエネルギーミックスのあり方が議論されてから、環境省においてはエネルギーミックスには表立っての関与がほとんどないまま、温室効果ガス削減目標を含む温暖化対策が検討されていく。しかし、もはや経済と環境を別々に議論するやり方は時代遅れだ。脱炭素化が経済成長の源泉であることは、「GX実現に向けた基本方針」でも認められている。
ついては、ただちにパリ協定の次の目標を議論する場を省庁の壁を越えて立ち上げ、エネルギーミックスの議論を一体化して進めていくべきだ。
その際には産業界の旧来の関係者ばかりではなく、産業界でも先進的な意見を持つ団体や金融界、知見のある市民団体、労働団体などの関係者も含んだ多様なステークホルダーを意思決定の場に入れるべきだ。日本の経済発展、産業振興のためにこそ、野心的な2035年削減目標が検討されるべきではないか。
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