「発酵」に対して世界で巨額マネーが動き出す理由 ビッグビジネスになりつつある発酵の分野

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実は、これまでも、アメリカではSAKEが造られていましたが、端的に言えば、日本資本による日本に親和性のあるコミュニティへの販売が主流でした。

しかし、2010年代以降になると、非日本人が非日本人を対象に、SAKEを製造し販売する流れが生まれました。これが、「北米酒造組合」の設立につながります。

彼らは非日本人を対象にしたマーケティングを行い、斬新なラベルデザインに、商品の設計についても、イノベーティブなSAKEを製造しています。

SAKEに限らず、他の日本の伝統的な発酵食品も、現地の人が、現地のコミュニティのために製造、販売する動きが出てきています。

フランス人による味噌メーカーも

例えば、「養老味噌」という味噌メーカーは、パリに拠点があり、パリに工場を持つ、フランス人による味噌メーカーです。彼らのWebサイトには「フランス産、麹と味噌の伝統製法」とキャッチフレーズが掲げられています。

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他にも、私の知る限りで、スイス、オランダ、イタリア、スペインなど、ほぼヨーロッパの大半の国で、現地の人が日本風の味噌や醤油を製造しています。まだ清酒SAKEのように大規模な資本レベルにはなっていませんが、近い将来、同じような動きになると予想しています。

このように、発酵は人類の未来に繋がるテクノロジーとしても、歴史や伝統を繋いでいく文化やガストロノミーの面からも世界中から注目されています。

その中で、日本が培ってきた発酵の技術と文化にも、改めて注目する必要があるといえるのではないでしょうか。

村井 裕一郎 糀屋三左衛門 ・第29代当主
むらい ゆういちろう

1979年、愛知県豊橋市生まれ。2002年に慶應義塾大学経済学部、2004年に慶應義塾大学環境情報学部卒業。2006年にアメリカのサンダーバードグローバル国際経営大学院にて国際経営学修士(MBA)取得。その後、室町時代の創業以来、種麹を作ってきた家業である株式会社糀屋三左衛門、またその研究開発企業である株式会社ビオックに入社。以来、得意先である味噌、醤油、清酒、焼酎などの醸造メーカーと関わり「発酵」のプロとして家業に携わる。2016年に家業を継ぎ第二十九代当主に就任。2022年には京都芸術大学大学院学際デザイン研究領域修了(芸術修士)。2023年より公益財団法人日本醸造協会理事。

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