ナイキ、スニーカーブームで「株価10倍超」の背景 生産数が増えた現在でも、企業価値は高いまま

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彼らは数十億円という年俸を稼いでいるうえに街を歩くとパパラッチに撮影されるため、たった一回履くだけのスニーカーのために何百万でも払うのです。「ルイ・ヴィトン」とコラボしたエア フォース 1も同じぐらいの金額を支払えば手に入れることができますが、85年のオリジナルのエア ジョーダン 1の新品はお金を出しても手に入るかどうか分からない。

だからこそ、それを履いていると単にお金を持っているだけでなく「分かってる感」を出すこともできるとあって、彼らは大金を払ってでも血眼(ちまなこ)になって探すのです。

消費者がスニーカーのために支払う金額が減っていく

しかし、そんな状況も一気に変わりました。コロナとウクライナ危機を経て、世界的に金利引き上げのトレンドが巻き起こったからです。金利引き上げになると「消費するよりも銀行にお金を預けて増やそう」という流れになるため市場に出回るお金の総量が減っていきます。そのため、これまで余っていたお金を投資する対象のひとつとしてプレ値が付いていた商品は大きな影響を受けます。

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実際に「ナイキ」の株価は2021年終わりに約179ドルを記録しましたが、2023年には100ドルあたりまで下がりました。これは既に投資家や市場は消費者がスニーカーのために支払う金額が減っていくだろう、と予測していることの証明でもあります。

また、金余りの経済のなかでトレンドリーダーたちがこぞって身に着けているレアなアイテムとしてマーケティングをおこなうことで、誰もが欲しがるアイテムとして需要を喚起し、その結果として投資財としての位置を築いたのが今のスニーカー市場の実情です。

アメリカの金利引き上げと日米の金利差によって起こった円安・物価高もスニーカーブームに水をさしました。食料品からガソリン代まで値上げになってしまうと、もともと少ないお小遣いをやりくりしてスニーカーを買っていた若者たちが離れていったからです。生産数の増大によるレア度の減少に加えて、金利引き上げによる投資マインドの減少というふたつの要素が影響したことで、2023年に入るとバブルが弾けるように急速にスニーカー市場が縮小していきました。

本明 秀文 「atmos」創設者

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ほんみょう ひでふみ / Hidefumi Hommyo

「atmos」創設者。元「Foot Locker atmos Japan」最高経営責任者。1968年生まれ。90年代初頭より、米国フィラデルフィアの大学に通いながらスニーカー収集に情熱を注ぐ。商社勤務を経て、1996年に原宿で「CHAPTER」、2000年に「atmos」をオープン。独自のディレクションが国内外で名を轟かせ、ニューヨーク店をはじめ海外13店舗を含む45店舗に拡大。2021年、米国「Foot Locker」が約400億円で買収を発表。スニーカービジネスの表と裏を知り尽くす業界のキーパーソン。

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