「はしか感染」が欧州で40倍超に増えた深刻理由 予防接種率の低下、他の感染症増加の前触れに

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はしかに感染した子ども1000人のうち1人は聴覚や知能に障害が生じ、1〜3人は死亡する可能性がある。WHOとCDCが昨年11月に発表した報告書によると、はしかによる死者数は2021年から2022年の間に世界で43%増加した。

感染力は強いが、ワクチンで防げる病気

はしかは最も感染力の高いウイルスの1つで、空気中でも最大2時間にわたって感染力を持ち続ける。「感染力が極めて高いため、感染者が1人いれば、近くにいるワクチン未接種者の最大90%が感染する」と、シュガーマン氏は言う。

特徴的な病状としては、呼吸器系の症状、熱、結膜炎、バラ疹や猩紅熱(しょうこうねつ)などほかのウイルス感染症とよく似た発疹がある。

アメリカでは、はしかワクチンは2回、生後12〜15カ月と4〜6歳のタイミングで接種される。CDCによると、1回だけの接種でも93パーセントの予防効果を発揮する。

旅行を計画している家族や、旅行を計画していなくても感染が心配な家族は、生後6〜11カ月の幼児には予防接種を受けさせ、子どもが生後6カ月未満の場合は旅行計画を考え直すべきだと、シュガーマン氏は力説している。

1990年代にMMR(麻疹・おたふくかぜ・風疹混合)ワクチンを接種すると自閉症になるという虚偽の情報が広まったことから、ワクチン接種率が低下。ワクチン接種の遅れは、その後に行われた数々の公衆衛生運動によって大部分取り戻されたものの、新型コロナウイルスのパンデミック期間中に、とくに低所得国でワクチン接種率がまたしても低下した。

中でもはしかはワクチン未接種の隙を突くのに長けたウイルスだが、ワクチン接種で予防できるほかの病気もはしかに続いて流行する可能性があると、ダラスにあるテキサス大学サウスウェスタン校オドネル公衆衛生大学院の大学院長、サード・オマー博士は指摘する。

オマー氏が言うには、「はしかは通常、(危険が迫っていることを知らせる)炭鉱のカナリアだ」。

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