エンジンは水平対向6気筒自然吸気のみとなり、レオーネに積まれていたEA系をもとに開発されたER27から、レガシィのEJ系をベースとしたEG33に一新され、SOHCからDOHCに進化していた。
3.3リッターという排気量は、レガシィの輸出仕様として用意され、その後国内にも展開された2.2リッター4気筒の1.5倍で、シリンダーのボア×ストロークは共通だ。
最高出力は240ps、最大トルクは31.5kgmで、3.0リッター自然吸気で280psをマークしたNSXにこそ及ばないが、トルクを含めてレガシィの2.2リッターの1.5倍以上であり、ハイパフォーマンス志向のチューニングだったといえる。
トランスミッションは、初代では5速MTもあったが、SVXでは4速ATのみとなり、駆動方式は北米仕様に前輪駆動も残されたものの、日本仕様は4WD(AWD)のみとなった。
しかしながら、SVXが発売された1991年9月は、すでにバブル崩壊のモードに入っていた。330万円以上という当初の価格は、当時のスバル車としては高価であり、販売は伸び悩んだ。そのため、5年間での日本での販売台数は、6000台にも満たない。
ちなみに海外向けも含めたトータルの生産台数は、約2.4万台となっている。うち半分以上が北米市場でデリバリーされ、欧州では4WDであるためスイスでの人気が高かったようだ。
独自の味わいに評価高まる
アルシオーネSVXが現役だったころ、筆者はすでに自動車メディア業界に身を置いていたこともあり、このクルマには何度か乗ったことがある。
その前に登場した初代レガシィも、レオーネ時代と比べてさまざまな部分で洗練されていたが、SVXはそれに輪をかけており、イタルデザインが描いたスタイリングにふさわしい走りの持ち主になっていた。
当時、筆者は30歳前後だったので、スカイラインGT-RやNSXの高性能版タイプRなど、パフォーマンスを前面に押し出したスポーツモデルにも惹かれた。それに比べると刺激は薄めだったけれど、独自の味わいにはあふれていたので、自分が歳を重ねていくにつれ、その評価は高まっていった。
「500 miles a day」、つまり「1日で800kmを余裕で走れる」というキャッチコピーどおり、高速道路を使ったグランドツーリングは得意中の得意だった。「アイサイト」などの先進運転支援システムはなかったけれど、今や多くの人が認めるスバル車の安定感や安心感は、この時代にすでに確立していたのだ。
今は世界的に2ドアのパーソナルクーペが生きにくい時代だが、一方でクーペタイプのSUVやクロスオーバーは注目されている。持ち前のロングクルージング性能を、スタイリッシュにユーザーにアピールする車種なら、今もクーペの存在意義はあるのではないかと思っている。
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