JR西、赤字ローカル線「ケタ違い投資」判断の背景 城端線と氷見線の3セク転換に150億円拠出
城端線と氷見線はどちらも富山県西部を走る単線非電化のローカル線である。城端線は高岡駅(高岡市)を起点に南へ向かい城端駅(南砺市)に至る全長29.9kmの路線、氷見線は同じく高岡駅を起点に北へ向かい氷見駅(氷見市)に至る全長16.5kmの路線だ。
地域公共交通として地元高校生の通学の足となっているほか、2015年の北陸新幹線金沢延伸開業を契機に観光路線としても全国的に注目を集めた。観光列車「ベル・モンターニュ・エ・メール(べるもんた)」や氷見市出身の漫画家藤子不二雄Ⓐの漫画『忍者ハットリくん』のキャラクターが描かれたラッピングを施した「忍者ハットリくん列車」がこの地域を運行する。
直近の利用状況は城端線の旅客輸送密度が2481人、氷見線が2157人(どちらも2022年度)で、JR西日本が「大量輸送という観点で鉄道の特性が十分に発揮できていない」とする2000人未満は上回っている。つまり、現段階ではぎりぎりで鉄道が適切な交通モードといえることになる。
当初は「LRTへの移行」を検討
北陸新幹線金沢延伸に伴い富山県内を走る北陸本線は並行在来線となりJR西日本の経営から切り離され、第三セクターの「あいの風とやま鉄道」に運行が引き継がれた。城端線・氷見線は新高岡駅で新幹線とは接続するものの、ほかのJRの在来線とつながることなく、ぽつんと取り残される形となった。
鉄道の運行には運転士だけでなく、保守要員、さらに総務などの事務を行うスタッフも必要だ。“離れ小島”となった在来線の運営はなんとも効率が悪い。JR西日本で城端線・氷見線問題を担当する同社地域まちづくり本部・交通まちづくり戦略部の青木淳部長はかつての北陸本線と城端線・氷見線の関係を木の幹と枝にたとえる。「北陸本線が“幹”なら城端線・氷見線は“枝”。幹がなくなると枝だけでの経営は難しい」。実際、2022年度の路線収支は10億円の赤字だ。
沿線人口は減少し、少子高齢化も進む。手をこまぬいていると城端線・氷見線の輸送人員はいずれ2000人を切り、鉄道としての存続が立ち行かなくなる。だったらジリ貧になる前に、つまり鉄道が適切な交通モードである今のうちに改善策を講じるべきだとして、沿線にある高岡市、氷見市、砺波市、南砺市の4自治体の意見が一致した。
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