JR西、赤字ローカル線「ケタ違い投資」判断の背景 城端線と氷見線の3セク転換に150億円拠出

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具体的にいくら出せるのか。青木部長は「一般的に現場が主張するなら積み上げ。個々の整備計画にいくらずつ出すか、それを積み上げた結果が出せる金額となる」と話す。確かに現場が判断するのであれば、コスト積み上げで金額を決めるのは当然だ。しかし、経営陣の判断は違った。

長谷川一明社長が決断した金額は150億円。「コストを積み上げて決めたわけではないので使途は問わない」と長谷川社長は説明した。

あいの風とやま鉄道 521系
北陸新幹線金沢延伸時に富山県内の並行在来線を引き継いだあいの風とやま鉄道の電車(写真:Jun Kaida/PIXTA)

150億円は「出せる最大限の金額」

11月29日に発表された再構築実施計画案によれば、再構築事業は2024年2月ごろから2034年3月までの約10年間をかけて行われる。計画開始から5年後をメドに、運行主体をJR西日本からあいの風とやま鉄道に移す。

事業費の総額は382億円で、鉄道施設整備費に342億円、経営安定支援に40億円が充てられる。国が128億円、富山県と沿線4市がそれぞれ75億円を負担する。JR西日本の150億円の使い道も固まり、鉄道施設整備費と経営安定支援を合わせ104億円負担する。残る46億円は、6年目以降の負担に備え経営安定基金として積み立てられる。

鉄道施設整備費342億円のうち最も大きいのは新型車両の導入で176億円。現行の24両から10両増やして34両とする。さらに除雪用の保守車両なども増備する。レールの更新など既存設備の再整備には78億円、運行本数の増加などに向けた設備の改良には44.8億円が投じられる。これによって運行本数は城端線・氷見線とも1日60本程度となり、現行より4~6割増える。利用者増により10億円の路線収支の赤字は2033年度に7億円に減る計画だ。また、城端線・氷見線の直通化のための施設整備に37.8億円が投じられる。

疑問となるのは、150億円という金額はどのように導き出されたのかという点だ。その理由について長谷川社長は「当社が出せる最大限の金額が150億円だった」と話すにとどめた。過去の事例にならえばJR西日本の拠出額はこの10分の1程度でいいはずだ。ただ、拠出額のインパクトは乏しい。

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