アセモグル教授が語る「AIと雇用」「中国問題」 人間を補完する労働者寄りのAIが必要だ

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──マイクロソフトなどは生成AIの広告ビジネスモデルへの適用に積極的ですね。

マイクロソフトは、生成AIの活用でデジタル広告ベースのモデルを拡大しようとしている。その一方で、プログラマーやオフィスワーカーなどの業務を補完する副操縦士のようなAIアプリケーションの構築も進めている。後者は労働者の側に立ったテクノロジーだ。

つまり、マイクロソフトは一方で搾取的な広告のビジネスモデルを進め、他方では労働者を補完するビジネスを進めている。ある意味で統合失調症のような状況にある。

アメリカ左派は労働者層を取り込めるか?

──アメリカは1900年前後に、左派的な政治活動が拡大した「革新主義の時代」がありました。現在の左派的なZ世代の台頭はそれを彷彿とさせませんか。

ただ、それによって現在の巨大テック企業などと競争できるのかは、私にはわからない。確かに大企業の支配に対する人々の反応は5年前に比べて増えている。しかし、「革新主義の時代」における連合は、今日よりもっと多くの人々を結び付ける非常に広範なものだった。

現在の革新的な政治は労働者から切り離されている。左派はもっと労働者を含む連合を結成すべきだ。

もしそれが実現できれば、先鋭的な左翼運動を推し進めるのではなく、中道左派の政治に穏健な影響を与えるだろう。労働者はオートメーション化によって最も被害を受けている人々だが、彼らの政治的見解はそれほど極端ではなく、より中道的な傾向があるからだ。

──良質な雇用を失った労働者に対しては、トランプ前大統領や共和党も支持の取り込みを行っています。

これは、われわれが再び非常に異なる何らかの先端に立っていることを示している。

今日、共和党の一部は民主主義そのものと民主主義の規範を放棄するなど完全におかしくなってしまったが、それでもまだ雇用を重視し労働者を保護するという点で社会民主主義者的な議員はたくさんいる。

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