──アメリカは人手不足やインフレに苦しんでいますが、日本の人手不足は人口減少によりさらに深刻です。
人手不足や高齢化社会は、適切なタイプのデジタル技術によって大きな恩恵を受けることができる。
日本はドイツや韓国と並んでロボットの生産量、活用、輸出などの面でトップクラスにある。より詳細に言えば、日本はとくに製造業におけるロボット活用から大きな恩恵を受けてきた。電化製品、自動車、機械部品など日本が輸出する分野の多くはロボットなしでは成り立たなかっただろう。
しかし、日本経済のほかの分野に目を向けると、サービス業や国際競争から守られている産業では、デジタルツールがあまり活用されていないように思う。つまりデジタル活用のよい面と悪い面があるということだ。日本は、製造業がAIやロボットをうまく活用したように、労働者を補完して高齢化の課題に対処するためにロボットを活用する方法を見つけることが重要だ。
これに対し、アメリカは社会的なセーフティネットがあまり強くなく、世界最先端の技術のいくつかは持っていない。そのため、労働市場から撤退した人たちは、いつかは戻ってくるだろう。
中国のデジタル独裁の持続は困難だ
──中国のようなデジタル独裁政治は長期的に持続可能でしょうか。
持続は簡単ではない。
習近平国家主席は以前に開始した政策を継続しており、その包括的な目的は、中国共産党の経済と社会への支配を維持することだ。しかし、中産階級が増加するにつれて、政府の持つ情報を保持し、中産階級の政治的関与を阻止するためにますます抑圧を強める必要が出てくるだろう。
中国共産党はそのためのAI技術も完成させている。しかし、それだけでは十分ではない。中国の政治システムにはますます多くの圧力が蓄積されている。いまの中国の均衡は、政治的にも経済的にも不安定だと思う。
──中国経済は停滞を続けています。これはデジタル独裁終焉の始まりでしょうか。
まさにそういうことだ。経済的に不安定で、資本配分には多くの問題がある。AIを含むイノベーションに注いでいる資源には多くの非効率性がある。中国の経済モデルがすぐに崩壊するとは思わない。しかし、これらの問題は山積している。
したがってますます政府の介入は必要となり、経済成長は徐々に鈍化するだろう。そして10年後には、問題が一層深まるのか、それともほかの多くの発展途上国のように中国の成長率は低くなるが小さなレベルの問題にとどまるかをわれわれは知ることになる。
しかし、問題を克服することは簡単ではないと思う。中国の問題は徐々に深くなっていくだろう。
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