アセモグル教授が語る「AIと雇用」「中国問題」 人間を補完する労働者寄りのAIが必要だ

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──アメリカの戦略について、デカップリングやデリスキングには賛成ですか、反対ですか。

『技術革新と不平等の1000年史(下巻)』(早川書房)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ある程度のデリスキングは必要だと思う。ロシアやイランを思い浮かべてほしい。もしアメリカが彼らと貿易を続け、豊富な石油の利益を与えたら、彼らは何をするつもりなのだろうか。

ロシアが突然、平和的なパートナーになるとは思えない。そのお金をウクライナ戦争の激化のために使うだろう。イランも同様で、そのお金を中東の不安定化のために使う。やや極端な言い方になってしまったが、中国の現実もそれと違いはない。

中国は共産党支配下で物事が進んでいる。アメリカが中国経済を下支えすれば、中国共産党をある程度助けることになる。そうした計算はしておくべきだ。中国共産党の権力は、中国国民と世界経済の両方を支配することになってしまう。

完全に断ち切れないがデリスキングは必要

そのため、ある程度のデリスキングは世界の安定やアメリカの経済安全保障にとってよいことだ。だからといって、中国との関係を完全に断ち切るということではない。中国への依存を減らし、日本やアメリカが中国のサプライチェーンや中国投資を考えるとき、「中国は民主主義国家ではない」と認識するという意味だ。

──ウクライナやパレスチナなど現在の世界は多くの紛争を抱えています。アメリカはこれをコントロールできるのでしょうか。

わからない。アメリカはもはや世界の唯一の警察ではない。われわれは現在、中国が非常に重要な役割を演じている2極化の世界、あるいは欧州連合(EU)や日本、インドを含むほかの大国との多極化の世界に住んでいる。だからアメリカだけの責任ではないと思う。世界の安定が完全に崩壊しないことを願っている。

(聞き手:野村明弘) 

野村 明弘 東洋経済 解説部コラムニスト

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のむら あきひろ / Akihiro Nomura

編集局解説部長。日本経済や財政・年金・社会保障、金融政策を中心に担当。業界担当記者としては、通信・ITや自動車、金融などの担当を歴任。経済学や道徳哲学の勉強が好きで、イギリスのケンブリッジ経済学派を中心に古典を読みあさってきた。『週刊東洋経済』編集部時代には「行動経済学」「不確実性の経済学」「ピケティ完全理解」などの特集を執筆した。

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