アセモグル教授が語る「AIと雇用」「中国問題」 人間を補完する労働者寄りのAIが必要だ

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──米ハリウッドでは全米脚本家組合(WGA)がAIをめぐるストライキを起こし勝利しました。

WGAは必ずしも生成AIを使わないことを求めていたわけではない。彼らが要求したのは脚本家や監督などクリエーティブな労働者の側が生成AIをどのように使うかの決定権を持つということだ。それは正しいアプローチだ。

企業のボスが労働者の見解や同意を得ることなしにAIを使った場合、労働者を不要にする自動化がはるかに起こりやすい。一方、AIを労働者側に与えれば、労働の生産性を上げるように使うだろう。社会がそうした方向に進めば、テック業界も労働者の能力を高めるのに役立つテクノロジーを開発することに勢いづくだろう。

1年前には、AIの議論で労組が使用者側と同じテーブルに着くことなど想像できなかった。今日、アメリカは完全に状況が変わった。バイデン政権や規制当局は労組との話し合いを進めている。労組は短期間のうちにAIについて精通するようになった。

プラットフォーマーのデータ独占は弊害

──人々を監視することで利益を得るという、プラットフォーマーの広告ビジネスモデルに批判的ですね。

彼らのビジネスモデルの何が問題なのかを明確にする必要があり、これは難しい質問だ。ただ、われわれは新著で彼らのビジネスモデルには直接的および間接的な害があると主張している。

直接的な害は、人々を監視して得た情報をどのように搾取的な方法で使用しているかということだ。それはユーザーの感情面に影響を及ぼし、民主主義にとって有害な、事実でない情報の交換を助長している。これらは規制が関与すべき問題だと思う。

間接的な害もある。例えば、広告収益の追求は多くのデータ収集への巨大な推進力を生み出し、少数のプラットフォーマーの独占につながる。人間を補完する労働者寄りのAI、または民主的なAIが勃興するために新しい企業の参入が必要だとしたらプラットフォーマーのデータ独占は弊害になる。

そのため、技術革新の方向を転換するためには、こうした広告ビジネスモデルを規制する必要がある。われわれはデジタル広告税の導入も提唱している。

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