大半の投資家は「天井」の意味がわかっていない 日経平均の年末高はあきらめたほうがいいのか

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日経平均は1989年12月29日の史上最高値3万8915円87銭をつけたあと、翌1990年4月2日に2万8000円まで一気に約1万円も下げた。その後、同年6月7日には3万3192円50銭の戻り高値をつけた。因縁の3万3000円台ともいえるが、あのときでさえ、これほど長く3万3000円台にいなかった。

やはり、天井とは「居るべきではないところまで上がってしまったあと」に起きる現象なのだ。

今週は1日たりとも「気が抜けない1週間」

今週(11~15日)は、FOMC前の「ブラックアウト期間」ということもあり、当然ながらアメリカの経済指標データが最大の注目点だ。

最も注目される指標としては、12日の11月CPI、13日の11月PPIが本線だが、すでに8日の11月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比+19.9万人と10月の同+15.0万人を上回った。また、11月の失業率は3.7%と、10月の3.9%から改善した。平均時給前年比は+4.0%と予想どおりで、下方修正された10月の+4.0%に一致した。

一方、12月ミシガン大学消費者態度指数も69.4と、前月の確報値や市場予想の61.3を大きく上回る強い数字だった。だが、1年先の期待インフレ率は11月の4.5%から3.1%へと大きく低下し、2021年3月以来の低水準となっている。

これらからわかるように、景気が依然堅調なのか大きく減速しているのか微妙な数字が出ている中で、FOMCのメンバーがどう判断するか。やはり、今週のCPIが決め手となりそうだ。

日本国内でも、11日は11月のマネーストック、10~12月期法人企業景気予測調査、12日に11月国内企業物価指数、13日に12月日銀短観と、日本株の先行きに影響する骨太の指標が相次ぐ。

さらに14日には対内証券売買契約(財務省ベース、外国人)は絶対確認しておきたい。外国人は9週連続買い越しのあと、前週で「売り転」したが、今回はどうか。同日は英国の金融政策委員会、ECB定例理事会の結果も発表される。

15日は中国11月工業生産を筆頭に、同国の不動産関係など各種の指標が出る。また同日は日本時間の17時15分以降、仏・独・ユーロ圏・英・米で相次いで12月のPMI速報値が発表されるが、これは個人的にも重要だと思っている。さらにこの日はアメリカで12月NY連銀製造業景気指数、11月鉱工業生産も発表される。

まさに今週は1日たりとも気の抜けない週となりそうだが、目先の波乱に惑わされず、強気を貫きたい。デフレ脱却相場は政府の「脱却宣言」が出るまで、インフレ相場はバブルになるまで終わらないのだ。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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