OpenAI電撃復帰「アルトマン」そんなにすごいのか 英雄好きシリコンバレーの困ったカルチャー
この種のスーパーヒーロー物語は、シリコンバレーの起業家たちの愛読書のほぼすべてに通底する陰の原動力となっている。ウーバーの創業者トラビス・カラニックは、社会に戦いを挑み、世の中を正そうとするヒーロの物語を描いたアイン・ランドの愛読者だった(編集部注:ランドの著作は、リバタリアニズム=自由至上主義やタフな資本主義を肯定する人々に多大な影響を与えていることで知られる)。
アマゾン創業者のジェフ・ベゾスは子供のころ、カーク船長がすべての決断を下して指揮を執る『スタートレック』のファンだった。2016年にドナルド・トランプを支援したベンチャーキャピタリストのピーター・ティールは、何人かの英雄が世界を救う壮大な物語『ロード・オブ・ザ・リング』が大好きだ。ティールの企業名(パランティア、ミスリル、バラー)はこの物語から取られたものである。
名誉のために言っておくと、アルトマンはティールのようなシリコンバレーの友人たちが書いた著作以外にも幅広い本をおすすめしているが、彼が推薦する読書リストにはシリコンバレーで愛されている、もう1つの作品が含まれている。
またしても、カリスマ的で先見の明のある学者とほぼ男性だけの信奉者たちがいかにして皆を、この場合は2500万もの惑星を救うことができるかを描く、アイザック・アシモフの『ファウンデーション』SFシリーズだ。
ジョブズをまねた人々の末路
しかし、現実にガンダルフやピカード艦長のようになる道には危険が散らばっている。
セラノスのエリザベス・ホームズはジョブズを模倣していたが、自らの血液検査技術がうまくいかなくなると、単純にうまくいっていると偽った。ウィーワークでオフィス体験を刷新すると約束したアダム・ニューマンはリッチになったが、同社は少し前に破綻した。
暗号通貨の有望株だったサム・バンクマン=フリードは詐欺罪で有罪の評決が下り、来年3月に量刑が言い渡される見通し。イーロン・マスクは、今はXと呼ばれるようになったツイッターを買収したが、自身の名声や銀行口座のプラスになったわけではない。
アルトマンにとっては、あの週末が個人的なピークだった可能性もあるということだ。
(執筆:David Streitfeld記者)
(C)2023 The New York Times
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