新たな運動の背後に、SFをテコにした自己の確立 『闇の精神史』書評

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『闇の精神史』木澤佐登志 著
闇の精神史(木澤佐登志 著/ハヤカワ新書/1122円/320ページ)
[著者プロフィル]木澤佐登志(きざわ・さとし)/1988年生まれ。文筆家。思想、ポップカルチャー、アングラカルチャーなどについて領域横断的に執筆する。著書に『ダークウェブ・アンダーグラウンド』『ニック・ランドと新反動主義』『失われた未来を求めて』、共著に『闇の自己啓発』『異常論文』がある。

ロシアのウクライナ侵略、イーロン・マスクの宇宙開発、ブラック・ライブズ・マターと呼ばれる黒人差別への抗議運動、生成AIの発達、メタバースへの熱狂──。

これらは突然発生したのではなく、屋台骨となる何かがあるのではないか。それを考えることで、さまざまな出来事のステークホルダーが何を目指しているのかが、よりわかりやすくなるのではないか。本書は、冒頭に挙げたような運動の背後に脈々と受け継がれる思想・精神があり、それが人々の行動に影響を与えてきたと推測する。

著者はこれまで、従来の分析から取りこぼされがちな、しかし社会に大きな影響を与えてきた活動を拾い上げ、リポートしてきた文筆家である。扱ってきたテーマとしては、ダークウェブと呼ばれる、インターネット上のアンダーグラウンドな場の実態や、暗黒啓蒙、すなわち米国のオルタナ右翼に影響を与えた反動主義の影響などがある。

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