新世代SF作家が"AI活用の根源"を問う「仕事小説」 『松岡まどか、起業します』書評

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『松岡まどか、起業します AIスタートアップ戦記』安野貴博 著
松岡まどか、起業します AIスタートアップ戦記(安野貴博 著/早川書房/1980円/392ページ)
[著者プロフィル]安野貴博(あんの・たかひろ)/ソフトウェアエンジニア。1990年生まれ。東京大学工学部卒業。2019年に「コンティニュアス・インテグレーション」で第6回日経星新一賞一般部門優秀賞(JBCCホールディングス賞)受賞。21年に『サーキット・スイッチャー』でデビュー。

近年、SF作家としてデビューする作家が再び増え、9月まで評者が会長を務めたSF作家クラブも新入会員で賑わっている。とくに昨今は、理工から人文まで多様な分野の専門家が研究や仕事で培った専門性を生かして作品を書く例も少なくない。

本書の著者も、そうした新世代SF作家の1人。情報工学・AI(人工知能)を専門とするエンジニアであり、起業家であり、かつSF作家でもある多才な人物だ。先の東京都知事選挙には無名ながら立候補し、政党から一切の応援なく15万票を獲得。政治・行政関係ではない候補者の中ではトップの5位となった。

選挙戦では自作のAIシステムでほかの候補者との対話を展開し、自作アプリでボランティアを有機的に組織し、東京都のすべての地区に選挙ポスターを貼った。政治・社会におけるAI活用である。

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