むろん、日本では人手不足問題が深刻化していることは明らかであり、日銀短観(9月調査)では、全規模・全産業の雇用人員判断DI(「過剰」 - 「不足」)はマイナス33(前回調査差マイナス1ポイント)と、人手不足感が強くなったことが示された。
企業のアンケート調査である雇用人員判断DIと有効求人倍率の乖離は大きくなっている。
簡単に言えば、人手は足りなくて困っているのだが求人は出さない、という状況である。
人手不足だが人を増やせない
厚労省の担当者によると、製造業や建設業などから、人手不足だが物価高の影響で求人を出すには至らなかったとの声が聞かれたという(ロイター)。物価高による収益環境の悪化が、固定費を増加させる追加雇用の障害となっている模様である。
ほかにも、コロナ後のペントアップ(繰り越し)需要は一時的であり、雇用を増やさずに対応しようという面もあるだろう。
いずれにせよ、需給の面からは労働市場は回復しているとはいえない。
なお、日銀は展望レポートで「有効求人倍率は、高水準ながら、このところいくぶん弱めの動きとなっている。これには、経済活動の正常化に伴う求職者数の増加も影響している」としているが、9月の新規求人数は前年同月比マイナス3.4%である。好循環に入る前に、企業は慎重化している。
岸田文雄首相は10月23日、臨時国会の所信表明演説で「30年ぶりとなる日本経済の変化の兆しを後戻りさせない」と述べた。確かに、外形的には久しぶりの高インフレや高賃金上昇率となっている。
しかし、ここまで指摘してきたように、前向きな好循環は生じていない。
実質賃金の目減りによって消費マインドも悪化する中、好循環の発生をどれだけ待ち続けることができるのか。再び日銀の展望レポートは願望レポートと呼ばれるのか、今後の記述の変化に注目が必要である。
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