具体的には、小売店などの統計には日本人の消費だけでなく外国人観光客のインバウンド消費も含まれてしまう。
むろん、日銀もこれは承知していて、「旅行収支調整済」として「旅行収支=外国人のインバウンド消費-日本人の海外での消費」を差し引いた系列が作成されている。
インバウンド消費の算出には「国際収支統計」の「訪日外客数」と「訪日外国人消費動向調査」が用いられる。ここで問題となるのが、家計調査と同様にサンプル調査である「訪日外国人消費動向調査」の精度である。
神奈川大学の飯塚信夫教授は2019年時点の論考で「訪日外国人の『買い物代』が正確に把握されていない可能性」を指摘した。
インバウンド消費が過小、日本人の消費が過大?
「訪日外国人消費動向調査」は簡単に言えば、帰り際の訪日外国人に対して滞在中の消費額について調査をすることで作成される。大きな買い物については把握していると予想されるが、コンビニや自動販売機で購入したような少額の消費については補足できていない可能性は想像に難くない。
この過小推計の可能性は、インバウンド消費が安定的に推移していれば、それほど攪乱要因とならないのだが、コロナ禍が終わってインバウンド消費が急増する中では無視できない要因になりうる。
すなわち、日銀の消費活動指数が「日本人の消費 = 消費全体 - インバウンド消費」という方法で作成されているとざっくり考えると、インバウンド消費が過小推計される場合、日本人の消費が過大推計されることになる。消費活動指数に偏った消費の判断は、楽観的すぎる可能性がある。
もう1つ、日銀にとって都合の悪い統計データがある。
日銀は日本の雇用・所得環境は「緩やかに改善している」としているが、有効求人倍率や新規求人倍率は2022年末をピークに緩やかに下落している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら