「減税」表明で迷走、岸田首相の不透明な解散戦略 解散時期は「来夏」と「総裁選後」の2択と首相周辺

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岸田首相にとって「維新の勢いが止まれば、解散のチャンス」(側近)であることは間違いない。それだけに、今春の統一地方選で大躍進した維新が、ここにきて政党支持率が下落し続けるなど、勢いが止まりつつあるのは「岸田政権にとって朗報」(自民選対)だ。

しかも、維新が最大のアピールポイントとしてきた大阪・関西万博の開催経費が「当初予測の2倍近く」となったことで、維新が唱えてきた「身を切る改革」が色あせ始めている。そもそも、メディアの世論調査でも「全国レベルでは大阪・関西万博の開催に反対する声が多数派」(アナリスト)で、「地元財界も負担額倍増に腰が引けている」(自民大阪府連)とされる。

このため、岸田首相側近は「万博開催まで1年となる来年4月には、開催延期や中止論が一気に拡大するはず。そうなれば、維新に奪われそうな保守票を取り戻すことで、解散しても自民の議席の大幅減は避けられる」と秘かにそろばんを弾く。

ただ、今回の「減税」騒ぎのように、「岸田首相の迷走ばかりが目立つ」(安倍派幹部)ことが続けば、「いくら野党が分裂状態でも、自民の議席減は避けられず、解散が自殺行為になる可能性」(同)は少なくない。

長期政権狙いという前提自体が「間違い」?

ただ、岸田首相自身が「3年の任期完投最優先」との考えなら、「解散さえしなければ、任期中の退陣は避けられる」(最側近)ことになる。そもそも、与党議員の大多数による「岸田首相が長期政権を狙うためには、総裁選前の解散断行・勝利しかない」という思い込みは「前提自体が間違っている」(同)ことになる。

そもそも、岸田首相は「もともと誰にも本音を吐露せず、側近といえども全面的に信用しない人物」(岸田家関係者)とされる。政権の大黒柱で岸田首相の後見役を自認する麻生太郎副総裁も「何を考えているかわからない」と苦笑する。

こうしてみると「岸田首相が本音を漏らさないことが、求心力維持の最大の要因になっている」(自民長老)ことは明らかだ。その一方で「それによって生じた国民的不信感が、政権の命取りになる可能性」(同)も拡大しており、「岸田流の政権維持戦略の前途は極めて不透明」(閣僚経験者)であることは間違いない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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