「減税」表明で迷走、岸田首相の不透明な解散戦略 解散時期は「来夏」と「総裁選後」の2択と首相周辺

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岸田首相が掲げた「国民への還元のための減税」については、間を置かずに政府・与党関係者から、①所得税と住民税で1人当たり4万円の定額減税、②非課税世帯など恩恵が受けられない層には1人7万円給付――との案が浮上している。

ただ、自民内から「所得減税は効果が出るまで時間がかかる。消費減税をやるべきだ」(無派閥若手)などの不満も相次ぎ、26日の政府与党政策懇談会で岸田首相が具体策の検討を指示して始まる自公税制調査会での協議は難航必至だ。

野党第1党争いが「政権への援護射撃」に

そうした中、一連の「減税」も含めた岸田首相の「思い付きのようなその場しのぎの対応」(閣僚経験者)が国民的不信と批判を招き、支持率下落につながっている。その一方で、次期衆院選に向けた野党陣営の足の引っ張り合いが、「自民の漁夫の利につながり、結果的に岸田政権への援護射撃になっている」(同)ことも否定できない。

22日の衆参補選は「与野党一騎打ち」となったことで、自民の苦戦につながった。しかし、それが次期衆院選での「野党統一候補」にはつながりそうもないのが実態だ。野党第1党を争う立憲民主と日本維新の会が、それぞれ全国の各小選挙区に「最大限の候補者擁立」を目指して競い合っているからだ。

そもそも、野党選挙協力は「立憲民主、共産、社民」と「維新、国民民主」が相互に対立する構図だ。さらに、立憲と国民がともに支持を期待する労働組合組織の「連合」は、芳野友子会長を筆頭に「反共産派」が主流で、しかも、賃上げなどでは自民との連携強化に踏み込んでいるため、自民が画策してきた「野党分断策」が功を奏しているとみられている。

そうした状況も踏まえ、岸田首相は当面「解散風は吹かせるが、実際には解散しないで、野党分裂を見極める構え」(官邸筋)とされる。とくに、自民の保守票を奪うことで自公政権に打撃を与え、「10年以内の政権奪取」を狙う維新に対し、岸田首相や自民執行部は、大阪・関西万博開催での政府全面支援を打ち出す一方、大阪以外の大都市での維新の躍進阻止に様々な手を打つなど、硬軟両様の揺さぶりに腐心している。

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