幼児教育も「子ども主体」に舵、待機児童問題を経て幼稚園・保育所も質の時代に 非認知能力の重視は全国的なムーブメントに

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子ども主体を実現している園は全体の約2割

――子ども主体が必要とされているにもかかわらず、今年7月にベネッセホールディングスが発表した調査結果によると、「子ども主体を実現している園は全体の約2割」ということです。

そうですね。決して多いとはいえませんが、文科省の「幼保小の架け橋プログラム」が本格的にスタートしたのは今年ですから、十分に増えてきていると思います。同じ調査では、「子ども主体へ試行錯誤中」という園も3割を超えています。子ども主体への動きが、確実に起きているということです。

子ども主体に変わりたいけど、それができない大きな理由の1つが「行事」だといわれています。保護者に見せるショー的な要素が強いのが、運動会や発表会などの行事です。ショー的要素を満足させるためには、子どもたちにキチンとやらせなければいけません。そろって体操したり遊戯させたり、歌ったりさせるためには、大人のコントロールで動く子どもでなければ困るわけです。子ども主体でやっていれば、そうしたコントロールで成り立つ行事ができない。

しかし、それがコロナ禍で変わりました。親たちに見せるショー的な運動会をやれなくなって、いつもの遊びの延長のようなことでミニ運動会をやった園がたくさんありました。それをビデオに撮って、保護者に配信する。それに、保護者も満足しています。

これをきっかけに、子ども主体に切り替える園が徐々に増えています。行事だけでなく、普段の様子の写真や動画をICTを使って保護者に届ける園も増えています。これもコロナ禍でICTの利用が広まったからだと思います。

先ほど言ったように、子どもの主体性を尊重し、非認知能力を重視する動きは全国的なムーブメントになっています。認知能力より非認知能力が大切だと考える保護者も増えているので、写真や動画で送られてくるわが子の様子から、その育ちの大切さが具体的に理解しやすくなったようです。

待機児童問題ばかりが注目されていたときは、保護者は預ける幼稚園や保育所を探すのに必死でした。それもひと段落して、保護者は幼稚園や保育所を「質」で選択するようになりつつあります。非認知能力の大切さに気づいた保護者は、子ども主体の方針でやっている幼稚園や保育所、認定こども園を選ぶはずです。

また、不適切な保育が大きな社会問題となっている中で、個々の主体性や個性が尊重されることがますます重要な時代になってきています。そうなってくると、幼稚園や保育所、認定こども園は、子ども主体に変わらざるをえなくなる。これから、大きく変わっていくはずです。

(注記のない写真: IYO / PIXTA)

前屋 毅 フリージャーナリスト

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まえや つよし / Tsuyoshi Maeya

1954年、鹿児島県生まれ。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。著書に『学校が合わない子どもたち』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』(朝日新聞社)、『ほんとうの教育をとりもどす 生きる力をはぐくむ授業への挑戦』(共栄書房)、『ブラック化する学校 少子化なのに、なぜ先生は忙しくなったのか?』(青春出版社)、『教師をやめる 14人の語りから見える学校のリアル』(学事出版)など。

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