岸田政権の台湾政策を支える「ネオ台湾派」の台頭 「リベラル」母体の新勢力の認識は正しいのか
こうした特徴をみると、彼らが2019年の香港での大規模デモや台湾問題をめぐる中国の強硬姿勢への反発を契機に生まれたことがわかる。中国の台湾産パイナップルなど農産・水産品への輸入禁止措置は、日本人の意識の底にある「判官贔屓(びいき)」が「いじめられる台湾」のイメージを増幅した部分もあろう。
さらに2011年の東日本大震災では、台湾から200億円の義援金が寄せられた。蔡英文政権が2019年、アジアで初めて同性婚を認める法律を施行したこと、コロナ禍ではオードリー・タン(唐鳳)デジタル担当相が果たした役割も「台湾は民主主義が進化し、それは民進党がリードしている」という評価につながったのではないか。
台湾を見捨てていいですか
これら蔡政権による対日発信の内容は、すべて自然発生的だったわけではない。蔡英文政権が、日本(人)の中に潜む「反日中国」の裏返しとしての「親日台湾」意識を土台に、親台湾、とりわけ現政権支持を醸成しようという政治的意図があったと思う。
「ネオ台湾派」の発言を紹介しよう。旧知のあるジャーナリストが2023年8月13日に放送されたTBS「サンデーモーニング」に出演した識者の発言をSNSで批判した。批判は、元朝日新聞記者で、真偽不明な情報を検証するメディアの編集長を務める古田大輔氏が、「麻生暴言を半ば肯定的に捉えた驚愕のコメントを行った」というものだった。
麻生発言とは、麻生氏が2023年8月7~9日に現職の副総裁として初めて台湾を訪問、台北での講演で「台湾有事」に際し「戦う覚悟」が求められていると、対中戦争を煽るかのような発言を指す。
番組録画を観ると、この識者は麻生発言について聞かれ、中国の国防費を含む軍事力増強を批判し、台湾有事が起きたら「台湾を見捨てていいですか、ということを今議論すべきときに来ていると思う。この麻生さんの発言が抑止力にプラスになるのか、それとも戦争を誘発するのか、それもきちんと議論しなければならないと思う」と話した。
発言内容から判断すると、彼が麻生発言を否定せず、むしろ「共感」している認識が滲む。この発言の胆(きも)は、「台湾を見捨てていいですか」の部分だ。少し踏み込んで言えば「日本は台湾を見捨てず守るべきだ」とも受け取れる。
岸田政権と蔡英文政権からすれば、リベラルが好むテレビ番組で、リベラル出身識者が「台湾を守れ」と公言してくれたのは、「旧台湾派」の発言の何十倍いや何百倍も勇気づけられたに違いない。
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