あなたにも出来る!社労士合格体験記(第30回)--ポイントは大正15年4月2日
後日談ですが、06年夏には綾子さんが久しぶりに日本に里帰り。松尾さんの音頭で、盛大な集まりが浅草で催され、私もいつかウスアイアへと、心を馳せました。しかし、10年4月、綾子さんは87歳で他界。ウスアイアの宿は、ご子息に引き継がれたそうです。
大正15年4月2日生まれ以降
ところで綾子さんは大正生まれですが、年金の勉強をすると「大正15年4月2日生まれ以降」という生年月日が頻繁に登場します。これは、年金の歴史で必ず覚えなければならない、2つの出来事に由来しています。
1つは昭和34年に国民年金法が制定され、昭和36年4月1日から全面施行されたことです。もう1つは昭和60年の年金大改正で、新法が昭和61年4月1日に施行されたことです。
日常生活では誕生日に年をとると思っている人が多いのですが、法律上は誕生日の前日に年をとります。明治35年施行の、年齢計算に関する法律には「年齢ハ出生ノ日ヨリ之ヲ起算ス」と規定され、これは現在も有効なのです。つまり、「大正15年4月2日生まれ以降」とは、新法が施行されてから60歳を迎えた人たちということになります。
新法施行後も旧法適用
逆にいえば、「大正15年4月1日以前」に生まれた場合は、旧法時代の昭和61年3月31日までに、既に60歳に達していたことになります。以前は60歳で年金支給が開始されていたため、この人たちには原則新法が適用されず、旧法がそのまま適用されることになりました。そこで、下記のような試験頻出の論点が登場します。
厚生年金保険法の加給年金は、新法では65歳未満の配偶者がいることが前提ですが、旧法にはこの年齢制限がありません。そのため、「大正15年4月1日以前生まれの配偶者については年齢制限がなく、65歳以上になっても加給年金額が加算される」となります。
また、国民年金法の振替加算は、「大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれた者」が対象です。大正15年4月1日以前は、旧法が適用されるため、そもそも加給年金を振り替える必要性が生じないからです。
受給資格期間25年要件の緩和
もう1つの論点は、受給資格期間25年要件の緩和です。旧国民年金法が施行された昭和36年4月1日時点で、既に一定の年齢に達していた人たちは、全体の加入期間が短くなるおそれがありました。そこで、「大正15年4月2日から昭和5年4月1日までの間に生まれた者」に限り、生年月日に応じて21~24年に緩和する特例を作ったのです。「イゴヨニ21年、コヨイもニシへ」とゴロ合わせで覚えましょう。
次回は、年男で戌年にあやかります。
【毎月第2・第4火曜日に掲載予定】
翠 洋(みす・ひろし)
1958年愛知県生まれ。国際基督教大学教養学部卒業後、ラジオたんぱ(現・ラジオNIKKEI)入社。番組制作、報道、出版事業などを経て45歳で退職。延べ1年半の失業期間の後、NHK「地球ラジオ」の専属ディレクターとして3年勤務。その間、ファイナンシャル・プランナー(AFP)に登録。2007年4度目の挑戦で「行政書士」合格後、行政書士法人で外国人の日本在留ビザ申請代行業務に従事。「社会保険労務士」には、2008年4度目の挑戦で合格。現在は、職業訓練講師として「人事労務基礎科」「基礎演習科」などを教えている。趣味はアルトサックス演奏、温泉巡り。「語学オタク」。
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