大人気「N-BOX」でEVを出せないホンダのジレンマ 国内4割を占める最量販車ゆえに冒険はできず
一方、今回のモデルチェンジではN-BOXのEV(電気自動車)版の投入はなされなかった。
ホンダは2040年までに日本も含めた世界で売る新車をすべてEVか燃料電池車(FCV)にする目標を掲げている。中国やアメリカでは昨年以降、新型EVの投入が本格化している。
国内独自規格である軽自動車についても、2024年春に軽商用車「N-VAN」ベースのEVを投入。さらに2025年にはハイトワゴン「N-ONE」ベースのEVも投入する予定だ。ただ、本命のN-BOXのEVモデル投入について、現状、ホンダが対外的に明示しているものはなく、「しっかりと検討したい」(高倉部長)というにとどまっている。
同じ軽EVでは、日産自動車と三菱自動車が共同開発し販売する軽EV(日産の販売車種名「SAKURA」、三菱自の販売車種名「eKクロスEV」)がいずれも計画以上の販売台数を記録し、市場での存在感を示している。にもかかわらず、N-BOXでEV化に踏み切らないのはなぜなのか。
EV化すれば大幅値上げは避けられない
背景にはEVの特性とN-BOXならではの事情がある。EVは生産コストがガソリン車に比べてかさみやすい。特に動力源となる電池は希少金属を多く使い、EVの生産コストのうち3割を占めるとされる。
N-BOXの戦う市場ではダイハツ工業やスズキといった同じ軽のスーパーハイト系に加えて、トヨタ自動車や日産が主力車種を投入しているコンパクトカーとも競合する。性能面に加えて価格も重要な要素で、EVにすることで車両価格が跳ね上がれば商品競争力が失われかねない。
実際、3代目N-BOXは安全装備の充実に加えて、原材料高騰の影響があったものの同等グレードで2万5000円~5万円の値上げに抑えた。国内の乗用車メーカーが10万円以上の値上げに踏み切るケースもある中で、N-BOX商品企画担当の廣瀬紀仁氏は「かなり無理をしたギリギリの値段設定」と打ち明ける。
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