「中国人の健康志向」が高まりつつある本当の理由 コロナ流行が「養生消費」に拍車をかけ急拡大

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

2015年にリリースされ、1億人以上のユーザーを抱える運動アプリ「Keep」はその好例です。フィットネス計画の作成や運動データの記録、オンラインレッスンの提供、コミュニティー機能など充実したコンテンツが人気を集めています。同社は今年7月に香港上場を果たし、スポーツテックの代表格となっています。

大ブームの「自転車」

また、ここ数年、普段のお出かけから、旅行、スポーツ競技まで自転車が登場する場面が急増しています。中国は以前から自転車大国と呼ばれ、1980年代の中国人と言えば、人民服を着て自転車に乗っているイメージでした。

その後、自動車の普及に伴って、自転車離れが起きましたが、シェア自転車のブームで多くの人がまた自転車に乗るようになっています。そして今、徒歩の代替手段だった自転車は、養生や健康を促進する手段として人気を博し、自転車専用道路の整備も進んでいます。

始めやすく、愛好者が集まりやすいのが自転車の魅力的なところです。実際、SNSではかっこいい自転車に乗っている人々の写真が数多くアップされているのです。

今は昔と違って、自転車を「健康とライフスタイル」の一部と考える人が多いため、よりハイエンドなブランドの製品が人気です。浙商証券研究所のレポートによると、世界の自転車市場規模は2020年の437億ドルから2027年には1405億ドルに達し、中国市場も拡大していくと予想されています。

京東は2022年9月に14歳から30歳までの人を調査対象とする「中国若者運動発展白書」を公開し、若い人たちのスポーツ消費の特徴を分析しています。スポーツのための消費支出が年々増加し、1人当たりの年平均消費金額は7238元に達しています。1万元以上の金額を出した人の割合も上昇しており、全体の18.1%になりました。

若い人にとっては、スポーツ器具、スポーツウエア、健康食品は「三種の神器」となっていますが、同調査によると、中国ブランドの製品を選ぶ人が73%にものぼり、中国製を好む傾向が強くなっていることがわかります。有望な市場ではありながら、外資系のスポーツブランドは苦戦を強いられる分野ともなっています。とはいえ、中間層やエリート/富裕層を中心に人気を獲得している外資系のスポーツアパレルブランドが好調です。例えば、コロナ禍以降、カナダの大手ルルレモンは中国で年平均50%超の伸び率を実現しており、日本のデサントも中国での収益が大きく拡大しています。両社の伸長は中国人消費者の嗜好およびライフスタイルの変化を軸に商品力とブランド力を強化した結果だと考えられます。変化がとてもはやい中国ですが、消費トレンドを正しく素早く捉え、消費者のニーズと特性をもとにしたブランド戦略の重要性を改めて認識したほうがいいでしょう。

趙 瑋琳 伊藤忠総研 産業調査センター 主任研究員

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

チョウ イーリン / Weilin Zhao

中国遼寧省出身。2002年に来日。2008年東京工業大学大学院社会理工学研究科修了、イノベーションの制度論、技術経済学にて博士号取得。早稲田大学商学学術院総合研究所、富士通総研を経て2019年9月より現職。情報通信、デジタルイノベーションと社会・経済への影響、プラットフォーマーとテックベンチャー企業などに関する研究を行っている。論文・執筆・講演多数。著書に『BATHの企業戦略分析―バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイの全容』(日経BP社)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事