セブン&アイ「池袋西武ストライキ」で深まる溝 9月1日のそごう・西武売却に向け交錯する思惑

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8月1日、セブン&アイHDはそごう・西武の林拓二前社長を解任する人事を発表。林前社長は現行の売却案に反対していた。そごう・西武の新社長には、同社の取締役常務執行役員だった田口広人氏が昇格。田口氏は西武百貨店出身で、セブン&アイHDでもIT関連事業子会社の社長を歴任した。セブン&アイHDは社長交代と同時に取締役3名を送り込んだ。

セブン&アイHDによる「唐突人事」は、それだけにとどまらない。8月25日には、そごう・西武の取締役をさらに3人増員する人事を発表。そごう・西武の取締役は合計13人となり、うち8人がセブン&アイHDとの兼務者。そごう・西武労組はこうした動きを見て、早急に売却を進めようとするセブン&アイHDへの警戒感から池袋西武でのスト通知をするに至った。

そごう・西武売却をめぐっては、紆余曲折が続いてきた。セブン&アイHDは2022年2月にそごう・西武の売却を決断、同年11月にアメリカの投資ファンドであるフォートレス・インベストメント・グループに2000億円以上で売却する契約を締結していた。

フォートレスは家電量販大手ヨドバシホールディングスと組み、ヨドバシカメラの西武池袋への入居を計画。だがその条件交渉が難航し、売却実行の時期は2度の延期を経て、現在は「無期限延期」状態だ。

セブン&アイHDが売却完了を急ぐ理由

ここにきてセブン&アイHDが9月1日までに売却を完了させようと前のめりになっているのはなぜか。セブン&アイHD関係者によれば「(西武鉄道などを傘下に持つ)西武ホールディングス(HD)が売却に対する姿勢を軟化させた」ことがあるようだ。

西武HDは池袋西武の地権者。そごう・西武の売却に関しては、そごう・西武労組、地権者である西武HD、地元の豊島区、それぞれの同意を得ることが条件だ。この関係者によれば、フォートレスはヨドバシの出店計画の一部を変更、低層階への出店は変わらないものの、西武鉄道の改札付近は西武百貨店のままにするなど、当初よりも西武HDが許容しやすい案になっているもようだという。

セブン&アイHDの井阪隆一社長にとって、そごう・西武の売却完了にようやく進展が見えてきたタイミングを逃すわけにはいかない。そう考えると、8月に入ってからのそごう・西武の社長更迭や役員人事からも、焦りが見えてくる。

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