プリゴジン搭乗機墜落はプーチンによる暗殺 クレムリンによる抹殺が迷宮入りする理由

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この結果、プリゴジン氏とウトキン氏というワグネル社最中枢を物理的に排除する準備は今回の墜落直前に完了していた。

その意味で、プーチン氏にとって今回のプリゴジン氏排除は、元スパイとして、「会心の工作」だったに違いない。大統領は墜落翌日の8月24日、プリコジン氏の家族に哀悼の意を表明したが、これはプーチン氏にとって得意の冷笑的な「作戦完了」の言葉だったのだろう。

プーチン政権である限り明らかにならない真相

一方で、軍部だけでなく、おひざ元のクレムリン内部でも、政権高官たちがプーチン氏への不満を漏らしているといわれる。大統領としては、将来のクーデターを封じ込める意味でも「裏切り者」には容赦なく鉄槌を下すという警告を発する狙いがあったのは間違いないだろう。

しかし、「公開処刑」ともいうべき今回の暗殺劇の真相が表沙汰になることは、プーチン政権の間はありそうもない。過去、政敵に対する暗殺事件や暗殺未遂事件はプーチン政権下で政治的日常風景のように起きているが、一度も真相がロシア国内で確認されたことはないからだ。

先述したスクリパリ氏だけではない。2006年の連邦保安局(FSB)元中佐リトビネンコ氏の毒殺事件や、エリツィン政権で第1副首相を務めた後、野党に転じ政権を批判していたネムツォフ氏の射殺事件(2015年)など、いずれもプーチン政権は真相を明らかにしていない。

将来、プーチン氏のウクライナ戦争での責任を問う国際的な討議の場が設けられた際には、一連の暗殺事件の解明も進めるべきだ。

吉田 成之 新聞通信調査会理事、共同通信ロシア・東欧ファイル編集長

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よしだ しげゆき / Shigeyuki Yoshida

1953年、東京生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒。1986年から1年間、サンクトペテルブルク大学に留学。1988~92年まで共同通信モスクワ支局。その後ワシントン支局を経て、1998年から2002年までモスクワ支局長。外信部長、共同通信常務理事などを経て現職。最初のモスクワ勤務でソ連崩壊に立ち会う。ワシントンでは米朝の核交渉を取材。2回目のモスクワではプーチン大統領誕生を取材。この間、「ソ連が計画経済制度を停止」「戦略核削減交渉(START)で米ソが基本合意」「ソ連が大統領制導入へ」「米が弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約からの脱退方針をロシアに表明」などの国際的スクープを書いた。

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