この結果、プリゴジン氏とウトキン氏というワグネル社最中枢を物理的に排除する準備は今回の墜落直前に完了していた。
その意味で、プーチン氏にとって今回のプリゴジン氏排除は、元スパイとして、「会心の工作」だったに違いない。大統領は墜落翌日の8月24日、プリコジン氏の家族に哀悼の意を表明したが、これはプーチン氏にとって得意の冷笑的な「作戦完了」の言葉だったのだろう。
プーチン政権である限り明らかにならない真相
一方で、軍部だけでなく、おひざ元のクレムリン内部でも、政権高官たちがプーチン氏への不満を漏らしているといわれる。大統領としては、将来のクーデターを封じ込める意味でも「裏切り者」には容赦なく鉄槌を下すという警告を発する狙いがあったのは間違いないだろう。
しかし、「公開処刑」ともいうべき今回の暗殺劇の真相が表沙汰になることは、プーチン政権の間はありそうもない。過去、政敵に対する暗殺事件や暗殺未遂事件はプーチン政権下で政治的日常風景のように起きているが、一度も真相がロシア国内で確認されたことはないからだ。
先述したスクリパリ氏だけではない。2006年の連邦保安局(FSB)元中佐リトビネンコ氏の毒殺事件や、エリツィン政権で第1副首相を務めた後、野党に転じ政権を批判していたネムツォフ氏の射殺事件(2015年)など、いずれもプーチン政権は真相を明らかにしていない。
将来、プーチン氏のウクライナ戦争での責任を問う国際的な討議の場が設けられた際には、一連の暗殺事件の解明も進めるべきだ。
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