未完成なのに大反響「自動焦点アイウェア」の正体 HOYA発ベンチャーが「視覚で悩む人」向けに開発
ViXion01のルーツとなる製品の原型は、眼鏡レンズなどを手がけるHOYAの社内ベンチャーとして生まれた。弱視、とくに少しでも暗い場所にいると目が見えにくくなる網膜色素変性症などの夜盲症の人たちのために、ガイドヘルパーがいなくても1人で外出できるようにするためのデバイスを開発することを目指し、実際に「MW10」という製品を作ったという。
しかし、そもそも重度の弱視障害を抱える人の数は極めて少ない。網膜色素変性症の場合、国内の患者は2.3万人ほどだ。
また、弱視障害者向けの日常生活用具として認定を受けると助成金が出るが、助成金認定は自治体ごとの判断となる。事務手続きの煩雑さはもちろん、製品が障害者にとってどう有益であるかについて、各自治体に説明を続けなければならない。そのうえで、製品の詳細な機能を弱視障害者自身にも知ってもらう必要がある。
HOYA社内では、そうした営業活動を続けながら、この技術をさらに進化させるための研究開発投資を続けることは困難との判断に至った。
「障害者向け」から発想を転換
とはいえ弱視障害者支援を考えるならば、何らかの形で事業化に向けて技術は残したい。そこでHOYAは、開発チームの一部をカーブアウトする形での起業を模索。そのコンセプトなどに共感する投資家や、類似技術で弱視障害者の問題解決を行っている別の起業家とのつながりが生まれ、2021年にViXionが設立された。
起業家でソフトウェアエンジニアでもある浅田一憲氏は、プロジェクトに共感して経営に参画した。浅田氏はそれまでにも、さまざまなタイプの色覚異常がある人の見え方をスマートフォンカメラで体験できる「色のシミュレータ」や、白内障手術後などに小さな文字が読みにくくなった人向けの「明るく大きく」といったアプリを開発してきた。
ViXionが立ち上がり、技術の幅広い応用についてディスカッションを始めると、当初考えていたよりも多くの人たちのニーズに気づいたという。
「視覚障害者の問題解決がスタート地点ですが、障害とまでは言えないものの、かなり多くの人が視覚の問題で困難を抱えていることがわかりました。"障害者向け"の開発は続けるとしても、より多くの困っている人たちのデバイスをその前に作れるのではないか。そう発想を切り替えたことが、ViXion01の企画につながりました」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら