前述の大手買り取り業者のIR担当者は、「当社が創業したときは、車の下取り価格は言い値で決まってしまうような世界だった。そこから販売車両の情報開示などの活動をして少しずつ信頼を築き上げてきたのに、今回の件でガラッと中古車の信頼が崩れてしまった」と憤る。「今後のマーケットの成長にネガティブな影響は避けられない」と失意を隠せない。
もっとも、業界のイメージ悪化をビッグモーターのせいにだけしていいかは微妙なところだ。
国民生活センターが運営するPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された「中古自動車」に関する相談件数は2022年度に7194件。国民生活センターのホームページでは、問い合わせ件数の多い商品の一例として紹介されている。購入時のトラブルのほかにも、買い取り業者に売却する際のトラブルも見られるという。
ちなみにPIO-NETへの「ビッグモーター」に関する2022年度の相談件数は1491件で、過去9年間で約5.7倍に急増している。前述の中古自動車に関する問い合わせ件数とは定義が異なるため単純にはいえないが、ビッグモーターにかかわらない問い合わせも決して少なくはなさそうだ。
業界で不正は珍しくない
中古車を含む自動車のアフターマーケットではここ数年、大手自動車メーカー系列ディーラーによる不正車検や板金・塗装の不正などが発覚している。アフターマーケットを見る消費者の目はより厳しくなりそうだ。
ビッグモーターの調査報告書には、「鈑金業界ではこれまでにも保険金請求に当たって、過剰な修理や実際に施行した工数以上の請求といったことは、業者の規模にかかわらず常態的に行われてきた」と述べる従業員が複数名いたとの記述があった。
自動車ユーザーである国民が「ビッグモーターは氷山の一角なのではないか」と考えても何らおかしくはない。中古車業界全体として健全化と信頼回復の取り組みが必要なことだけは確かだ。
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