一方、中期的には「ビッグモーターから離れた顧客が自社に流入してくる」と期待する声がある。7月25日の会見で和泉伸二新社長が、足もとの買い取り・販売台数が「通常時に比べて約半減している」と明かしているが、その後も不祥事が相次いで発覚していることを考えると顧客離れの長期化は免れそうにない。
問題はビッグモーターから離れた顧客がどのような行動をするか。大手買い取り業者では、直近の土日時点(7月29日、30日)で集客数に顕著な差が見られた。「ビッグモーターが近くにある自社店舗では、顧客流入によって10%ほど客数が増えた」(IR担当者)。ただし、「ビッグモーターが近隣にない店舗では10%ほど客数が減った」(同)といい、プラスとマイナスが混在している。
業者間での中古車売買を仲介するカーオークション業者への影響はどうか。
換金売りへの期待と不安
あるオークション業者の管理職は、「不透明な部分が多い」と前置きしたうえで、「仮にビッグモーターの事業継続が怪しくなり、規模縮小のために小売りの在庫をキャッシュに換えるというのであれば、われわれのオークションに流れてくる台数が増えるかもしれない。これはプラスになりうる」と予想する。
オークション業者は出品料や成約料、落札料などの手数料ビジネスで稼ぐため、出品台数が増えれば単純に業績にはプラスとなるからだ。反面、ビッグモーターが在庫の中古車を一気に換金売りした場合の市況低下を懸念する声もある。
半導体不足による自動車生産の不調を受けて中古車相場は高値が続いていたが、昨年9月以降は下落基調となっていた。それがこの4月以降は持ち直し局面にある。中古車相場は自動車生産や為替を含む輸出環境、新車発売動向などのさまざまな要素が絡み合って決まるため、ビッグモーター問題の影響は読み切れないのが現状だ。
業態や時間軸によって影響度合いは異なるとはいえ、トータルでは「中古車業界へのイメージ悪化によるマイナス影響が大きい」との見方はおおむね共通している。
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