しかし本来、修理1件当たりの工賃は持ち込まれた車両の損傷状況によって決まるものだ。工場スタッフの営業努力によって上げるものではない。
にもかかわらず工賃をノルマに設定していたことの意味について、ある工場スタッフは「(水増し請求の)不正を指示しているのだと思った」と調査委に証言している。
つまり、損傷のない車両のパネル部分に、あえて板金塗装を施すといった手口での水増し請求に手を染めなければ、達成が容易ではないノルマを本部が設定していたということだ。
報告書においても、水増し請求によって「手っ取り早く目標を達成しようとするものが現れることは(本社は)容易に予測できた」「著しく不合理で、大きな問題であった」と指摘している。
損保ジャパンの出向者は、この営業ノルマの存在を認識していたにもかかわらず、これまで是正しようとはしてこなかった。
それだけでない。不正請求が内部告発によって顕在化した後も損保ジャパンはノルマについて触れようとせず「作業員のミス」などと片付け、ビッグモーターの片棒を担ぐようにして早期の幕引きを図ろうとした。
その結果、自賠責(自動車損害賠償責任保険)の契約が損保ジャパンへ一気に流れていった。
そうした一つ一つの「状況証拠」が、ビッグモーターとの癒着を示唆している。そのような中で第三者調査委員会を立ち上げて、損保ジャパンはウミを出し切れるのか。経営陣の責任はもはや逃れられない局面にきている。
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