ミニストップだけ「客数減」、背景に価格戦略の迷走 今夏は正念場、負のスパイラル脱出なるか
ミニストップは2019年7月、従来最大130円(税抜き、以下同)だった工場製造のおにぎりを100円に値下げした。競合他社が人件費などの高騰からおにぎりの値上げに踏み切っていた中での「奇襲作戦」だった。
2019年度当時の月次を見ると、上期(3~8月)の既存店客数は全ての月で前期割れしているものの、7月の値下げが浸透した下期(9~2020年2月)は全ての月で前期比超え。客単価も9月を除けば全月で前期を超えている。季節を問わず日常的に購入されるおにぎりで、節約志向の消費者を捉えたといえるだろう。
だが足元の物価高騰の影響もあり、ミニストップは昨年10月、「100円おにぎり」を廃止せざるを得なかった。「値上げ後も他社よりは安い」(ミニストップのIR担当者)が、短期間に値下げと値上げを繰り返してしまったこと、また「100円おにぎり」という他社にはない価値を失ってしまったことで、「おにぎりの販売が落ち込んでしまい、それに比例して全体の客数も減ってしまった」(同)。
客数減に焦った本部は、110円など低価格帯のおにぎりの種類を増やすことで対抗した。販売は若干上向いたというものの、まだ値上げ前には戻っていないという。
「一貫性欠き、現場は疲弊」とオーナー
「価格が突然下がり、今度は突然上がった。なんで下げたのか、なんで上げたのかわからない」
価格戦略の迷走については、加盟店からこんな声が上がっている。さらにある加盟店のオーナーは「最大の問題は、本部側がこうした施策を打った背景を加盟店に説明し、オーナーたちをまとめようとする姿勢が弱いことだ。本部の中長期的な経営戦略が見えず、現場は疲弊している」と指摘する。
コンビニ各社にとって加盟店との連携強化は永遠の課題だ。たとえば最大手のセブン-イレブンは、2019年から永松文彦社長とオーナー15人ほどとの意見交換会を、今年からは全オーナーを集めた交流会をスタートさせている。オーナーにとっては、他のオーナーの取り組みを知るいい機会になっているという。
他方ミニストップでは、「勉強会は社長が一方的に話す録画が店舗のコンピューターに送られるだけ。交流会についても本部主導で企画されることはなく、知り合いのオーナー同士で非公式に会うしかない」(前出のオーナー)。本部と加盟店が密にコミュニケーションを取れるのが小規模チェーンの利点のはずだが、ミニストップはその利点を生かし切れていない。
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