日本は名目GDP成長率が伸びる「普通の国」になる モルガン・スタンレーの山口氏が説く「大転換」

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異例の伸びを示している日本の名目GDP(国内総生産)成長率。それは何を意味するのか。

名目成長の復活により「普通の国」になることで、日本経済は夜明けを迎えるのか(写真:よっちゃん必撮仕事人/PIXTA)
足元で日本の名目GDP成長率が、異例にも見えるほど高い伸び率を記録している。こうした中、モルガン・スタンレーMUFG証券がまとめたリポート「大転換-日本の名目成長の復活」が国内外の投資家から注目を集めている。株価も好調な中、名目成長の伸びは日本経済自体の復活への足がかりにもなるのか。同社のチーフ日本エコノミストである山口毅氏に話を聞いた。

──今年1〜3月期の実質GDP成長率は年率換算で前期比2.7%と好調でしたが、名目GDPの成長率は、それをさらに上回る同8.3%と非常に高い伸びを示しました。GDPデフレーター(GDPにおけるインフレ率に相当)は前年同期比2.0%と、前の期の1.2%から拡大しています。山口さんは「名目成長の復活」という大転換が日本経済に起きていると指摘しています。

われわれは、2023年の名目GDP成長率は一時的に5%近くまで上昇し、バブル期の1991年以来の高い伸び率になると予想している。名目GDP成長率は、大まかに言って実質GDP成長率とGDPデフレーターの伸び率の和からなるが、われわれは、内需主導の底堅い実質GDP成長率と、GDPデフレーターの伸び率加速の両方を見込んでいる。

2023年のGDPデフレーターは4%を超えてくるとみているが、このように伸び率が加速するのは、消費者物価や設備投資を含む国内価格の上昇に加え、原油など商品価格高騰の反動により日本の交易条件の改善(=輸入物価の下落はGDPデフレーターのプラス要因となる)が予想されるためだ。

名目成長率は2〜2.5%台にシフトする

名目GDP成長率は、2023年以降も中期的な基調として2〜2.5%へ上方シフトするとみており、1993年から2019年の間の平均成長率0.4%程度を上回る。長年世界の主要国で唯一、名目成長率が横ばい圏で推移してきた日本経済にとって、重大な変化が訪れることを意味する。

──アベノミクスの初期にもGDPデフレーターや名目GDP成長率は一時的に高まったときがありました。今回はそのときとは違うのでしょうか。

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