子育て支援でも「日本の少子化が止まらない」盲点 山田昌弘氏が説く「高等教育無償化」の必要性
政策案は日本社会の実態から的外れ。子育て支援が実際にどれだけ出生率の向上に結びつくかは不明瞭だ。
児童手当の拡充で出生率向上はせいぜい0.01%程度か
──岸田文雄政権や自民党は、次の「骨太方針」(6月頃公表)の目玉として盛り込むべく、少子化対策の議論に前のめりになっています。拡充策の中核は、中学生以下の子ども1人当たり月1万〜1万5000円の児童手当で所得制限をなくすことです(現在は世帯主の年収960万円以上で月5000円に減額、年収1200万円超で対象外)。その効果はどう考えますか。
それは、やらないよりはやったほうがいいだろう。ほかにも児童手当ての対象年齢を高校生まで引き上げるとか、2人目、3人目の児童手当額を増やすといった多子世帯の優遇などの話もある。ただ、私の感覚だと、それらを実施しても、出生率はせいぜい0.01〜0.02%ポイント上がる程度だと思う。
──その程度ですか……。コストが数千億円から兆円単位のオーダーと言われていますから、費用対効果としてはよくないですね。
子育て支援は必要だ。だが、育児支援がそのまま少子化対策になるとは限らない。全体として言えば、結婚しない人の割合がかなりの高さ(男女平均で生涯未婚率は約4分の1)になっていることが、出生率低下の主因だ。児童手当の所得制限を撤廃したら、彼ら・彼女らが結婚できるかと言えば、ノーだろう。
結婚している人でも、今お金がないから子どもを産まないのではない。将来の子どもの高等教育費用が心配なので、1人や2人に子供の数を制限している。だから、児童手当の拡充より、高等教育の親負担を軽減したほうが日本では出生率の向上に効くと考える。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら