エネルギー危機で再エネ改革進める欧州の柔軟さ マッキンゼー シニアパートナーが語る展望と課題
――ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、世界規模でエネルギー価格が高騰しました。とりわけ天然ガスなどでロシアへのエネルギー依存度が高かったヨーロッパでは、エネルギー危機到来の懸念が高まりました。
2022年末から2023年にかけての冬は、思っていた以上にうまく対処できた。これには供給面と需要面での要因がある。
需要面では記録的な暖冬によるエネルギー消費の抑制が寄与した。家庭や企業で省エネルギーも進んだ。供給面では、ロシアからのパイプライン経由での天然ガス供給の大幅な削減に、ヨーロッパ諸国はアメリカや中東からの液化天然ガス(LNG)輸入の大幅拡大で対応した。再ガス化設備などインフラ整備が予想よりも早く進んだことも大きかった。
節ガスや域外への生産シフトで乗り切る
――エネルギー価格の高騰が、ヨーロッパ企業や国民生活に与えた影響は。
ヨーロッパでの天然ガスの市場価格は昨年9月には100万BTU(イギリス熱量単位)当たり90ドル台と史上最高値をつけた後、今年4月にかけて同10ドル台まで大きく低下した。需給面でのバッファーとなる地下ガス貯蔵施設の充填率が例年よりも高く、市場に安心感が広がったためだ。
家庭は電気やガスの使用量を減らして対処した。産業面では、肥料製造など一部の企業がEU(ヨーロッパ連合)域内での生産を取りやめて、輸入に切り替えた。医薬品など化学メーカーも成長に資する投資をEU域外にシフトした。
同時に脱炭素化に向けた動きも加速している。たとえば鉄鋼業では、二酸化炭素(CO2)排出量の少ない電気炉に切り替える動きも見られる。水素を用いた直接還元法への切り替えの動きも始まった。
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