「どうしても100歳まで生きたい」人に説いた言葉 人生の悩みに向き合うための道しるべとなる「寓話」

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目標の選択、資源の最適化、補償

ここで紹介した逸話は、SOC理論(Selective Optimization with Compensation:選択最適化補償理論)を説明するための事例としてしばしば使われるものだ。

人は歳をとるにつれて、さまざまな機能が低下し、若い頃なら難なくできていたことが、だんだんとできなくなっていく。では、歳を重ねていく中で体力や筋力が衰えても、これまでどおり、楽しく有意義な人生を送っていくにはどうしたらいいのだろうか。そこで役に立つのがSOC理論である。簡単に解説していこう。

私たち人間は年齢を問わず、何らかの目標を定め、それに向かって生きている。目標は大きなものから、日常的な小さなものまでさまざまである。そういう目標が達成できればうれしいし、逆に目標が達成できなければ落ち込むことになる。つまり、張り合いのある毎日を送るには、その人なりの目標を持って、それを達成することが重要なのだ。

若い頃のように動けないことを嘆いていても仕方ない

目標を達成する一連の過程は、① 目標の選択(Selection)、② 資源の最適化(Optimization)、③ 補償(Compensation)の3つの要素に分けられる。ルービンシュタインの逸話を重ねながら、① 目標の選択、② 資源の最適化、③ 補償について説明しよう。

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① 目標の選択:目標を絞り込んだり、目標を切り替えたりすること。ルービンシュタインの場合は加齢に伴って今までどおりに演奏することが難しくなったため、曲目を減らすという戦略をとった。

② 資源の最適化:自分の所有する資源(お金や時間、能力、体力、意欲など)をどのように使えば自分の目標が達成できるかを熟慮すること。ルービンシュタインは厳選した曲(①)を繰り返し練習しつつ、新しい手法(③)の習熟に努めた。

③ 補償:他者からの支援を受けること、機械や道具を使って心身の機能の衰えを補うこと、これまで試していなかった手法を導入すること。ルービンシュタインの場合はテンポに変化をつけることで速さを際立たせる手法を取り入れた。

若い頃のように動けないことをただ嘆いていても仕方がない。目標を切り替えること、自分の所有する資源の使い方を見直すこと、他者や器具の助けを借りることで、張り合いのある生活を送ることは十分に可能である。

戸田 智弘 ライター・キャリアカウンセラー

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とだ ともひろ / Tomohiro Toda

1960年愛知県生まれ。北海道大学工学部、法政大学社会学部卒業。著書に『働く理由』『続・働く理由』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

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