俳優・佐藤二朗が語る「ふにゃけ大人の会」の中身 子どもたちよ「こんな大人でもなんとか生きていける」

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かつて僕が中学生だった時、大人は全くふにゃけてないと思っていた。大人はしっかりしていると思っていた。だから大人は大変だと思い、大人になることは楽しみでもあったが、それよりも怖さみたいな気持ちの方が勝ってたような気がする。

事実、大人はしっかりしている。大人はふにゃけてない、というより、ふにゃけられない。少なくとも容易にはふにゃけられない。幸いにも役者という、人に迷惑を掛けないということ以外はわりとふにゃけてても大丈夫?な職に就いた僕は、情けないと思いつつも公然とふにゃける。が、まっとうな職業の大人たちは、容易くふにゃける訳にはいかないだろう。「しっかり」の鎧を容易く脱ぐことはできないだろう。

少しくらい、ふにゃけててもいいんでないの

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ただ、どうだろね大人の皆さん。本当に大切なもの、本当に大切な人、それ以外は、少しくらい、ふにゃけててもいいんでないの。正座した足を崩し、暑さに耐えられないなら少しくらい、そのネクタイ、緩めてもいいんでないの。よし。決めたぞ。俺はここに、「ふにゃけ大人の会」を発足するものである。

とはいえ。しっかりしようと思い、強くなろうと思い、あとに続く者の範となるべく、歯を食いしばる大人はカッコいいし、そのさまは美しい。それに、全部の大人が俺みたいなミスターふにゃけになった世の中は想像したくない。よし。決めたぞ。「ふにゃけ大人の会」、解散。バカ。俺バカ。ただ、こんな大人でも大丈夫。母校の中学生たちが、「大人になるのは楽しみ」とほんの少しでも思ってくれたら、いいな。

(初出:AERA dot.2018/07/22)

佐藤 二朗 俳優

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さとう じろう / Jiro Sato

1969年生まれ、愛知県出身。俳優、脚本家、映画監督。96年に演劇ユニット「ちからわざ」を旗揚げ、全公演で作・出演。近年は『ひきこもり先生』『鎌倉殿の13人』(NHK)での演技が話題になり、『歴史探偵』(NHK)の所長、『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』(フジテレビ)の主宰も務めるなどマルチな才能を発揮。原作・脚本・監督を務めた映画『はるヲうるひと』(2021)は海外の映画祭で最優秀脚本賞を、主演映画『さがす』(2022)は国内の映画祭で最優秀男優賞を受賞。23年8月に『リボルバーリリー』(行定勲監督)、24年春に主演作を含む映画3作の公開が控える。Twitterフォロワーは200万人超。

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