名物駅弁「ひっぱりだこ飯」、台湾で販売の舞台裏 現地で食材調達し調理、人気はどうだった?
今回用意したのは1日当たり300食。1つ399元(日本円で約1800円)で販売したが、連日4時間ほどで完売した。筆者が訪れた最終日は、11時のオープン前からすでに長い列ができ、最初のロットである180食は12時半には売り切れた。
購入者に話を聞くと「出張の際、毎回駅で見かけて気になっていたが、食べる機会がなかったので買いに来た」、「関西に行った際、いつも食べる駅弁を簡単に手に入れる事ができて嬉しい」といった声が聞かれた。3日連続で買いに来たという客もおり、認知度の高さがうかがえた。
食材調達、現地調理の難しさ
もちろん、海外での駅弁販売は直接輸入するわけにはいかず、現地で製造、盛り付けを行う必要があり、この点がハードルとなる。
現地に店舗を持つ崎陽軒や、台湾にホテルがあるJR東日本などと違い、淡路屋はパートナー企業やキッチンを持たない。そこで、調理を引き受ける業者を探すことから始まり、4カ月の時間をかけ食材や味の調整を繰り返したという。製造業者の担当者は「送られてきた調理動画を見て真似するところから始まった。台湾では手に入らない食材もあり試行錯誤の繰り返しだった」と語る。
筆者は朝4時から仕込みを始める製造現場を取材し、その苦労と工夫を垣根見ることができた。まずは、醤油飯の基本となる米。台湾における米の品種は日本で用いられるジャポニカ米にインディカ米を交雑させた「蓬莱米」が主力で、パサパサとした食感が特色だ。しかし、これでは水加減が重要となる炊き込みご飯の美味しさを実現できない。日本産の米を持ち込むことも考えたが関税や輸送コストを考慮し、価格帯の高いレストランで使われることが多い現地・台東産のコシヒカリを仕入れることで対応した。
また、日本では付け合わせに使われる菜の花も台湾で手に入れることが難しく、ほうれん草や青梗菜などさまざまな野菜を試した結果、たどり着いたのは市場に出回る量も少ない皇宮菜(ツルムラサキ)と呼ばれる青菜。程よい苦味とみずみずしい食感で菜の花の味に極力近付けたという。
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