通貨防衛する日本は今や米国の脅威ではないのか 喜んでいられない為替報告書「監視リスト」除外
要するに「資源高と円安による貿易赤字拡大」が監視リストから除外された理由である。
しかし、後述するように、そもそも3つの基準のうち②の経常黒字については日本はアメリカから批判されるような構造ではないし、③の為替介入に至っては報告書の警戒とは逆方向(自国通貨買い・ドル売り)で実施している。
為替政策報告書は「不当な通貨安で輸出を伸ばそうとする国」への警告であって、自国通貨を買い支えしなければならないような貿易赤字国は対象になりえない。
ちなみに①の対米貿易黒字は確かに抵触しているが、アメリカの貿易赤字全体に占める対日貿易赤字は2000年前後に20%以上だったのが、足元では5%程度まで縮小しており、10%以上を占めるメキシコ、30%以上を占める中国と比較すれば小さな存在である。
「通貨安誘導する対米黒字国」を敵視
為替政策報告書は、対外取引を通じてアメリカ経済に害をなす可能性のある国を「監視リスト対象国」もしくは「為替操作国」と選り分けして、必要に応じて米議会に制裁措置を促す役割を負っている。
この「アメリカにとって害をなす」についてはさまざまなケースが想定されるが、象徴的には自国通貨安誘導によって貿易黒字(特に対米貿易黒字)を積み上げる国は敵視されやすい。一様にくくることは難しいものの、「競争力上、アメリカにとって脅威」という国がリストアップされやすいのであり、この点、日本はもはや脅威ではなくなったと見ることもできる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら