金正恩が水産加工施設を重点視察するワケ 北朝鮮は、現実的な政策を継続できるのか

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対外関係では、中国との政治的関係が冷却しているものの、実状は「政冷経暖」であるのが実状だと三村氏は言う。昨年から北朝鮮はロシアとの経済協力関係を強化、北朝鮮国内の鉄道・道路改善事業で合意するなど目立った成果もあるものの、「貿易関係は中国との関係が依然として強い」(三村氏)。数量・金額的にも中国とそれ以外の国との開きは依然として大きいのが現状だ。

経済開発区は地方政府の実験場

また、北朝鮮は国内19カ所に「経済開発区」を設置、外国資本の導入の受け皿を用意している。対米関係をはじめ、北朝鮮を取り巻く国際環境は厳しいため、外資の導入はうまくいっていない。

これについて三村氏は、「経済開発区は地方政府による実験場」と見ている。「経済開発区法など法的保証が可能な範囲として、地方に経済開発区を設置し、まずやらせてみようとしているのではないか」と説明する。

北朝鮮経済を取り巻く状況は厳しさが残るものの、圃田担当責任制や工場の自主裁量の拡大といった現実的政策が今後も継続できるかに発展のカギはありそうだ。社会主義企業管理責任制を継続して拡充できるかも重要だ。

経済の国営部門と、現在黙認されている非国営部門との関係がどうなるかも成長のカギを握りそう。三村氏は、国営部門が非国営部門を取り込むことができるか、逆に、国営部門の生存が非国営部門の存在がないと難しくなるのか見極める必要があるという。

さらに、今後の生産の増加で国民生活の向上が目に見えて実現できるか、そして今後の政策に対し抵抗勢力になりうる既得権層の不満をどう解消できるか。金正恩時代の経済改革の今後を占ううえで重要なポイントになりそうだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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