ドラマ「unknown」挑戦的すぎるキスシーンの真価 高畑充希の"キス研究"が開花して名作の予感

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その時、田中圭の『先生を消す方程式。』(テレビ朝日系、2020年)を取り上げ、こう記した。

〈最終回、ゾンビになった恋人(松本まりか)に本気キス。ただ唇と唇を重ねるのではなく、まず上唇を喰むようにして、そこから下唇へ……という愛情をこめた過程を、カメラを動かしたりカットを割ったりしないでしっかり見せた(以下略)〉。

そう、『unknown』にも出演している田中圭は“キス”においても名優なのである。

つまり今回、キスドラマ研究に熱心な高畑充希と、どんなときでもナチュラルに迫真な芝居ができ、キスでも演技派・田中圭の共演で、ドラマ至上最高のキスドラマが生まれようとしていたと考えられる。

だが、キスシーンは、それだけ単独で素敵でも、ドラマが盛り上がるわけではない。ドラマの内容に夢中になって、その流れで必然性のあるキスシーンがあってこそ、視聴者の心は沸き立つのである。その点ではジャンルミックスしすぎのきらいのある『unknown』はやや策に走った惜しさも感じる。

作為を作為と感じさせないナチュラルな表現

『unknown』には、プロデューサーの貴島彩理、監督の瑠東東一郎、脚本の徳尾浩司、キャストの田中圭、吉田鋼太郎と、大ヒットし、映画にもなった『おっさんずラブ』に関わったスタッフ、キャストが集結している。

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田中圭(右)主演の『おっさんずラブ』で“ヒロイン”を演じた吉田鋼太郎(写真:『unknown』公式サイトより)

『おっさんずラブ』は男性同士の本気の“好き”が伝わってくる秀作だった。どんなに設定が奇想天外でも、その瞬間をホンモノにしてしまう才能が集まれば、考察とかキスとか表層的な部分ではなく、手応えのある本気の感情のあふれる物語を作ることは可能なのである。

例えば、5月23日に放送された第6話で、こころと虎松と加賀美がドライブして、さくらんぼ狩りをしながら、口のなかで茎を結んで見せる場面は、キスしなくてもキスを想像するようなくすぐりシーンで、しかも3人が仲睦まじくて、とてもいい場面であった。

こういう作為を作為と感じさせないナチュラルな表現を作る才能が集まっているのだから、『unknown』が名作になる希望はまだある。

木俣 冬 コラムニスト

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きまた ふゆ / Fuyu Kimata

東京都生まれ。ドラマ、映画、演劇などエンタメ作品に関するルポルタージュ、インタビュー、レビューなどを執筆。ノベライズも手がける。

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