倒産する会社から発せられる「決算書のシグナル」 業績不振のバロメーターとなる指標はこれだ

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帝国データバンク(TDB)の調査によれば、国内の22年度の倒産件数(負債1000万円以上の法的整理)は約6800件と、3年ぶりに増加。とくにサービス・小売業など、コロナ禍の影響を強く受けた業種が目立つ。

ちなみに迷惑度で倒産より「低い」となっている廃業も、まったく迷惑がかからないわけではない。「少額債権が支払われず放置されることはよくある。債権者は返済を法的に訴えることもできるが、回収額より弁護士費用のほうが高くつきそうな場合、多くの人は泣き寝入りする」。東京商工リサーチ(TSR)情報本部情報部の原田三寛部長はそう話す。

22年の廃業(休業・解散含む)は約5万3400件と、その数は倒産の比ではない。割合は不明だが、この中には取引先を困らせる“不健全な廃業”も一定数ある。

倒産・生存の「分かれ目」

取引先の倒産・廃業で債権放棄のような憂き目に遭わないためには、決算書から発せられるシグナルを見逃さないことが重要だ。

倒産企業と生存企業の決算書を比べると、さまざまなギャップに気がつく。TSRが倒産企業(財務データを保有する383社)と生存企業(同38万1045社)のデータを比較した調査によれば、例えば有利子負債構成比率(=借入金や社債などの有利子負債÷総資本)は、直近2022年で生存企業の平均が29.9%なのに対し、倒産企業は69.3%と大差がつく。

コロナ禍では「ゼロゼロ融資」などの手厚い金融支援が続いたため、企業が返済能力を超えた負債を抱えている懸念が高まっている。そこで、借入金が月商の何倍に相当するかを示す借入金月商倍率(=有利子負債÷〈年間売上高÷12〉)が注目されている。

直近では、倒産企業の同倍率は生存企業に比べ、1倍程度高くなっている。ただし時系列の変化を見ると、生存企業の倍率もコロナ前に比べ上昇しており、その差は縮まっている。

業績不振のバロメーターともなる売上高人件費比率(=人件費÷売上高)に関しても、倒産・生存の両方とも平均が上がっている。「景況の変化で、数年前の常識が通用しなくなることがある。『何倍、何%程度なら安全』と丸覚えするのではなく、基準は変わっていくものだと認識したうえで、その時々の安全圏を把握するのが重要」と原田氏は指摘する。

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