6月に「11回のXデー」米国の債務不履行で起こる事 刻々と近づく恐怖の未体験ゾーン
ただし、政府が特定の短期証券、中期証券、国債でデフォルトを起こしても、政府のあらゆる債券がデフォルトする「クロスデフォルト」を引き起こすものではない、と業界団体の証券業金融市場協会が述べている点は重要だ。つまり、政府がデフォルトを起こしたとしても、財務省証券の流通は大部分維持されるだろう。
そのため、数兆ドル規模のデリバティブ契約やレポ取引と呼ばれる短期ローンなど、財務省証券を担保としている市場が受ける影響は限定的なものにとどまるとみられる。それでも、デフォルトの影響を受けた担保は、すべて設定し直さなければならなくなる。
アメリカの「優越的地位」に消せないダメージ
パニックの沈静化とともに、世界経済におけるアメリカの基本的役割に対する信頼が変化し、元に戻せなくなるおそれもある。
外国人投資家や外国政府は、アメリカ国債の31%にあたる7.6兆ドルを保有。アメリカ政府が長年享受してきた有利な資金調達条件に欠かせない存在となっている。
しかし、デフォルトすればアメリカ国債の保有リスクが高まり、当面の間、アメリカ政府の借入金利は上昇しかねない。また、世界貿易におけるドルの中心的な役割も損なわれるおそれがある。
政府の借入金利が上がれば、企業が社債発行や融資によって資金調達するコストも高くなり、消費者が住宅ローンを借りたりクレジットカードを使ったりする際の金利も上昇するはずだ。
経済全体としては、ホワイトハウスの予測によると、短期間のデフォルトであっても50万人の雇用が失われ、軽度の景気後退が生ずる。デフォルトが長引けば、800万人の雇用喪失という衝撃的な結果と深刻な景気後退がもたらされ、経済は6%以上縮小すると予測されている。
このような潜在的コストは未知数ではあっても莫大なものになると広く考えられており、そうしたコストが債務上限に関する交渉で議会を合意に向かわせる動機になると考える向きは多い。
(執筆:Joe Rennison記者)
(C)2023 The New York Times
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