まもなく発射命令?北朝鮮の「軍事偵察衛星」とは 7~10月の国家的行事日での発射が有力視されているが…

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北朝鮮で衛星は「光明星」と名付けられている。1998年8月から2016年2月までに合計5つの「光明星」を発射・打ち上げたとしており、うち光明星「3号1号機」を除いて衛星を軌道に載せることに成功したとしている。ただ、アメリカ航空宇宙局などは、実際には光明星「3号2号機」と「4号」の2つのみが発射に成功、軌道にも投入できたと評価している。

1998年8月の光明星「1号」は発射当時、「金日成(国家主席)と金正日(総書記)を称賛する音楽の旋律をモールス信号で発信している」と明らかにした。2009年4月に発射された同「2号」は「楕円軌道に正確に投入された」と公表している。

発射当日に外国報道陣を平壌に招いたことも

光明星「3号1号機」は金総書記が本格的に政権を担うようになった直後の2012年4月に発射されたが、発射から約2分後に空中爆発した。当時は北朝鮮に外国の報道関係者を招き、発射の様子は取材されていた。金総書記は打ち上げ失敗を認めている。

光明星「3号2号機」は2012年12月に発射され軌道投入に成功、アメリカも成功していることを表明した。また「4号」は2016年2月に発射され、打ち上げが成功している。アメリカの宇宙開発関係者も「北朝鮮が発射した衛星は、きれいな軌道を描きながら宇宙空間にいた」と打ち明ける。

前出の2022年12月に北朝鮮・国家宇宙開発局が「実験を行った」と発表した際、北朝鮮側は「衛星試験品搭載体から撮影した」とする、韓国のソウルと仁川(インチョン)両市の写真を公表した。この写真の分析から、「解像度は4メートルぐらい」で、性能はそれほどよくはないと韓国の専門家らは判断しているようだ。

韓国側からの「軍事偵察衛星としては未熟」といった評価に、金総書記の実妹で、韓国やアメリカとの関係を担当している金与正・党副部長が韓国に向けて談話を発表したことがある。このとき「われわれが行った衛星開発実験のための発射が中距離弾道ミサイル発射である」とし、「誰が830秒に過ぎない1回だけの実験に、高価な高分解能撮影機を設置し実験をするだろうか」と逆ギレ気味の口調で韓国側の見方を否定した。

北朝鮮からすれば、軍事偵察衛星の保有は国家の重要目標であり、「アメリカと南朝鮮(韓国)からの軍事的威嚇や南朝鮮から身を守る国家主権と正当防衛権に属する」ものという意味づけをしている。

北朝鮮は衛星発射は当然の権利であると公言している以上、発射前には国際海事機関(IMO)などの関連国際機関に発射予定と落下推定海域といったことを公表するはずだ。実際に、これまでの衛星発射の中には、事前にIMOなどに通知したことがある。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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