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「非主流派」との人脈構築は思わぬ時に役に立つ 佐藤優の情報術、91年ソ連クーデター事件簿⑪

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実はシュヴェード・リトアニア共産党(ソ連派、外務省公電ではシュヴェッド)第2書記と筆者は、クーデターが勃発した日である1991年8月19日の早朝に2回、電話で話している。公電第5230号に記した07:10というのは2回目の電話の時刻で、1回目の電話は6時台だった。

「ゴルバチョフが健康上の理由で出務不能になったということだ。ヤナーエフが大統領代行になった。クーデターかもしれない」と伝えると、シュヴェード氏は「何(シトー)!」と短くつぶやいたきり、しばらく黙り込んだ。それから「マサル、何も聞いていない。モスクワで動きがあったら、ささいなことでもいいから連絡してほしい」と言って電話を切った。それからシュヴェード氏とは2〜3時間に1回、電話で連絡を取った。

クーデターが失敗に終わった後、モスクワでシュヴェード氏と会った。シュヴェード氏は「マサルの電話のおかげで執務が始まる午前9時までに2時間、考えることができた。そこで様子見をする腹が固まった。リトアニアのソ連派共産党は国家非常事態委員会を歓迎する雰囲気だったが、それにのみ込まれずに私が静かにできたのは、マサルからいち早く情報が入ったからだ」と言った。

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